85:なんだかんだ引き受けたほんとのわけですよね。
でもそのときにも受験勉強は大変だったはずなんです。一学期のうちには過去問演習に勉強を移行したいってことで、学校側とも相談しながら受験勉強を進めてました(当時はぜんぜん思わなかったんですけど、いまにして思うと、三年の夏休みから過去問演習に完全移行したのはまあまあ早めで、そこそこハードだったなと……)。
話を持ちかけられて、そして演劇部にひさびさに足を踏み入れたんです。その日は二年生か三年生かの普通科の理系クラスの教室を借りていたので、校舎のなかでもいちばんグラウンド(めちゃくちゃ狭い)が近い位置のところでした。
同期のひとたちはさすがに知ってるけど、文芸部以外の下の代とはさすがにちょっとよそよそしさが拭えず。まあそうですよね。自分が入る前に辞めたひとなんて、感覚的には要はよそものに過ぎません。
ちょっと倦んだ感覚を覚えつつも私は自分が演劇部の活動場所に、ある種の正当性をもって立っていることを、ひそかに昏く嬉しく思ってました。だって――彼もいるし、ね。
そのあとそのまま脚本をお願いできないかという話になって、考えとくと私はその日は言いました。
そして帰っていろいろ考えました。なにせ受験勉強もある、それに小説のお師匠さんたちのすすめ(超絶婉曲表現。実際には「中編くらい書いてみせろよオラ」みたいな感じだった。感謝はしてますほんとですよ!!)もあり、受験前にいちど中編を書いて投稿しておくつもりでした。
でも、引き受けました。
たしかに、嬉しかったです、たしかに。やってみたかったです。その嬉しさを、恩返ししたかったのです。
でも、受験生としてだいじな時間を削ってでも提案を受け入れた、そのときにほんとはいちばん、私の頭と心にあったのは――たしかに、彼の存在であったことは、まったく否定はできないです。いまになれば。
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