78:そして馴染んでいったのですよ。
そして、後輩ちゃんの入部後――。
彼女はたしかに忙しそうで、事前に言っていた通り毎回活動に来られるわけではありませんでした。が、小説を書きたいという思いはどうやらほんとうだったようで、毎回部誌に小説を載せてくれていました。
すこし文学的な、いまでいうライト文芸みたいなノリで等身大の悩みや決意を綴っていて、毎回楽しみにしていた記憶があります。
最初の印象通り彼女はずっと私にとってかわいい後輩でしたが、ひとつ意外なことがありました。
それは、高校生男子組に思いのほか馴染んでいったことです。いえ、もはや毒舌……と言ってもいいほどに。毒舌、もういまとなっては懐かしい言葉となってしまいましたね。毒舌キャラとか、当時は方々でその言葉が使われていました。
彼女にとってはよっぽど年上の高校生男子たちに、敬語はいちおう使いつつも、すごい勢いで交流を取っていくようになりました。
とにかく口が回る回る。ひとをからかったり、ちょっと貶めるような冗談を言ったり。そして、男子たちのほうもまんざらでもないように、私には見えました。
「第一印象はかわいくておとなしい子だったのに!」みたいな評判が部内に立ちはじめるのに、そんなに時間はいりませんでした。そうですねえ、私たち全員が進級する季節のころには、もうすっかり彼女はそういうキャラになっていたと思います。
保健室の先生は彼女を繊細そうと評し、たしかに私にもそんな一面をはにかむように見せていた後輩ちゃんでしたが、なるほどやはり猫を被るという技術を持ち合わせていたようです。
一見いい子の優等生で、そのじつ口を開けばずばずばと毒舌。
もっともそれは彼女自身認めてはいたようですし。いまにして思えば、中高生の女の子が自分をそういうキャラづけにすることは、まったく変なことではないですよね。……彼女に限って言えば、女子どうしゆえにそういう勢いある応酬ができないのだとしたら、私はちょっとさみしかったのですが。
しかし、彼女は後輩くんにはそこまで突撃していきませんでした。
なぜなら――。
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