45:「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」その8

「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」

 ああ、そうだね、ある意味ではほんとうにその通りだった。


 だって、私にとって、

 文芸部というのは、……居場所だったのだから。

 私のいない文芸部――それは、「私にとっての文芸部」では、なかったのだ。

 ただ、それだけのこと。


 ……それだけのことだったのだ。

 私の、あの、からまわりして走り回って、暗くなってもまだ騒がしい校舎のなかを、作業中のジャージ姿の人たちや床に散らばる段ボールやらペンキやらの上をよけて歩いて、

 なぜか当時はわけもわからず涙がちょっとだけ出てきたあの――文化祭は。


 ……まあ、それだけ、なんですけど。

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