44:「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」その7
文化祭当日のことは、むしろ準備よりも記憶がぼんやりしている。
部活ではなくクラスのほうの出し物の受付をやってるとき、金銭管理の問題でつねにふたり以上ひとがいないとだめなのに、
文芸部のほうが気になりすぎて、「シフト、早上がりしていい?」と勝手を言ってクラスメイトの男の子を困らせてしまったことを、なんだか妙に、覚えている。
そう、この「気になりすぎて」もほんとうは嘘だった。当時は、自覚がなかったけれど。
べつに心配とか不安とかではなかったのだ。感情が、そういう皮をかぶっていただけで。
私は文芸部にいたかったのだ。ひとときでも、長く。
高二の秋。来年は受験だから文化祭は出しものはできないよと言われまくった秋のこと。
文芸部がもしかしたら永遠ではないのかもしれないなんて、そんな真理に、気づきかけてしまっていたときのこと。
とりかえしのつかない青春を、自分が送っているという焦燥感。
そんな、ほんとうはとてもとても、……くだらない気持ちで、
私は、「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」と、
めいっぱいに仕事をして、部長として、そう、部長としてと言えるように、……校内を騒がしくばたばたと走り回っていたのだ。
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