40:「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」その3

 これも、もちろん、いまならわかるのだ。

 組織というのはむしろ、永遠でないからこそ、尊く、価値があるものなのだと。

 とくに学校の部活なんていうのは、新陳代謝が激しい。一年ごとにメンバーが入れ替わり、下の立場だった者が中間へ、そして上の立場になる。短いサイクルでの入れ替わりを繰り返す。

 どんなに嫌でも終わりがくる。永遠の日常ではない。終わりのある日常。

 組織というのは組織である以上そういう性質なのだ。……だからこそ、そこでうまれうる友情や個別的な人間関係は、そのあとずっと続く場合もあるし、それもとても尊く価値のある――組織の性質、だと思うが。

 当時は日常が永遠に続くかのような気がしてた。終わるだなんて、よくわからなかった。信じられなかった。私がそれをはじめてちゃんと知ったのは、卒業式後の三月に、学籍は高校にあるけど私服で来いと言われて、私服で学校に行って、……制服の後輩たちとすれ違ったときである。


 だから、「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」――そんなわけはない、そんなわけはない、そんなわけはなかったのだ。

 私がかりに部長でなくても、だれかがやっただろう。私が部員でなくても、だれかがそこにいただろう。

 さまざまな要因の結果として、私は高一の秋から高三まで、二年以上部長をつとめたけれども、

 ……それはただ私がたまたまそこにいたから、にすぎない。


 けれども、すくなくとも高二の秋のそのときは、……その気持ちはほんとうで、私は泣きたいほどその気持ちをかかえていた。重く。

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