39:「私がいなけりゃ、文芸部は成り立たない」その2
いまであればこそわかる、当然のことがある。
組織というのは、永遠ではない。もちろん私たちの文芸部も、けっきょくのところ永遠ではなかった。
その文化祭の一年半後に私は卒業し、その次にはひと学年下の後輩たちが、そしてその次の年にはふた学年下の後輩たちが、卒業していった。毎年毎年、文化祭に遊びに行ってはいた。年を追うごとに、自分はもうこの組織の人間ではなく、OGという名前のお客さまなのだという実感が、思いを強めていった。
そういえば自分だって高校一年生のときの大学生の先輩なんていうのは、お客さまでしかなかった。OBOGが来たときの、尊敬というよりは敬遠といったほうが申しわけないけども近いその気持ち。そのことを覚えてはいるから、こちらが卒業後の文芸部を訪ね、「卒業生です」と言って、たとえかたちだけであっても自分たちを歓迎してくれる母校の文芸部には、あたたかい感謝の気持ちは、ある。ただしその気持ちは、お互い縁がありながらも、やはりよそものどうしの交差の愛想のあたたかさなのだろうとは、思う。
さみしかった。
文芸部が永遠ではなかったことが、さみしかった。卒業後、それこそ二十歳を過ぎるあたりまで、私はずっと「自分たちの文芸部」の亡霊に、とらわれていたように思う、……お恥ずかしながら。
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