23:第一印象と、いっしょに暮らしているいまの感想と。

 私の第一印象。

 彼は、おもむろに続けました。


「……なんて言うのかな。俺が中学までに出会ってきた相手というのは、ほとんどがAと言えばAと返してきた。

 ときたま変なことを言うヤツがいても、せいぜいがAダッシュやAマイナス。それだけの違いでも、Aそのまんまじゃないってだけで変化球だった」


 なんだけどね、と彼は肘をついて組んだ両手にあごを載せて、眼鏡の奥の目からちゃんとこっちを見てきました。


「アンタはね、Aと言うとBと返してくるんだよ」

「Bだけ? CやDは?」


 彼いわく。CやDもあっただろうけど、私と出会いたてのころの彼にはその違いはわからなかったそう。

 なにせ、まずは「Aと言ってるのにこのひとはAでないものを返してくる!」という感想で手いっぱいだったそうで。


「なぜ、Aの話をしているのにいきなりBの話になるのか。当時の俺はアンタになにか言われるたびそれを考えていた」

「そんで反応がバグってたわけか。メモリ食うもんねそういうの」

「まあ」

「しかし、AのはずがBね。言い得て妙だね。まあ私、話や文脈がよくすっ飛ぶからねえ……ぴょんぴょんと……。いまはだいじょうぶなの? そういうひとが毎日隣にいると、疲れると思うんだけど」



 すでにこの会話をしている時点で、同居して数か月ほど。

 彼はちらり、とこっちを見てくれました。




「いまはBもCもDも、菜月なつき(作者)にとってはAなんだってことがわかったから、だいじょうぶ」




 ……なんか、ねえ。

 そういうことを、ひとのむつかしさみたいなものを、そこまで、直視して。



 そういう表現であらわせるってところも、ほんとに、うちの彼氏はおもしろいのです――。

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