22:ヤバいひとだと思っていたっぽいです。

「ヤバいひとだと思ったよ」



 これは、時系列が変わりまして、つい先日の私の二十六歳の誕生日のときのことです。

 昼間に行きたいところに連れてってもらい、夜は自宅で酒池肉林なおめでとうパーティーをしていたとき。

 けっこう、飲んだので。案の定私は酔って、想い出話を彼にせがみました。


 私の第一印象は、どうだった? って。



「ヤバいと思った」

「ヤバいって……なにがさ? どうヤバいの?」



 なんと言うのかな、と彼は考え込みました。

 彼は、けっして嘘をつきませんから。こういうときには、よく考えてくれるのです。



「嘘をつかない人間なんていないだろ! ひとを信じすぎ。じつは嘘をついてないという嘘をついてるのでは!」といった名もなきだれかさんの声がすぐに聞こえてまいりそうですが、まあ、そうですね。私はこのことにかんしては、論理的には証明できないかなと思ってます。


 ただ、経験的に、そして信念的になら。

 知っています。私は。彼が、けっして嘘をつかない人間であることを。

 そんでまあ私がそう信じている時点で、彼はそうあってくれる――そんな、論理的には無根拠の確信さえも、ありますね。まあ信じる力って強いです。余談ですけども……。


 彼はほんのささいなことであっても。

 そこはひとこと、嘘でも「うん」と軽くうなずいておけば楽だよ、ってとこでも。

 かたくなに、うなずかない。ほんとうに、――嘘はつけないひとなんですよ。

 飄々としている雰囲気のくせに。



 彼のとてもむつかしいところでもありますが、ほんとうにおもしろいところでもあります。

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