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『クリストフ。対抗機のデータは送ったよ。対抗機二機はどちらも第二世代と第三世代。……パイロットはどちらもかなりの手練れらしい。気をつけて』
「両方とも俺と同年か、兄貴くらいの年なんですけどね」
クリストフは、『オプティカルスナイパー』のコックピットに収まっていた。
『実力者なことに変わりはない。一対二は避け、一対一か二対一でかかれ。良いね?』
「了解。ヨハンナ、そっちの準備は?」
『全て万全の状態です。いつでも出られます』
「了解。『オプティカルスナイパー』、出撃します」
「レーダーに機影。対抗機『つるぎ』、『せいらん』だな」
『私は『せいらん』をやります。先輩は『つるぎ』を』
「了解。ヤバくなったら呼んでよ」
クリストフは通信を切り、レーダーを睨む。
「(対抗機はまだ探知されない……。さっきチラ見した感じ、ステルス性があるようには見えなかったけどな……)」
クリストフが対抗機について推察しようとした瞬間、レーダーが機影を捉えた。
「対抗機探知! 速い、これどう考えてもマッハ近い速さで動いてるぞ!?」
言うや否や、モニターも対抗機を捉える。
「(動きは単純。この距離なら外さない!)」
引き金を引く。『オプティカルスナイパー』のレーザーライフルの先から放たれる一筋の光条が、対抗機に迫るが__________
「避けた!?」
驚いたことに、対抗機はそれを避けた。発射の予兆を見切っていたのだろうが、この距離で避けるのは相当難しいはずだった。
相手の演習用プラズマブレードをどうにかいなすが、ライフルが破壊の判定を喰らってしまった。
「ちくしょう!」
予備兵装のハンドガンを抜き、対抗機に向ける。未来位置を予測しての三連射。
「(…………レーザービット、あんまり使いたくないんだよな)」
機密情報保持というか、民間人の目前で、第三世代機の虎の子を見せびらかしたくない、というのが本音だ。
「……湊さん、本当に上手い……!」
ヨハンナもヨハンナで、苦戦していた。
相手は湊エレン操る『せいらん』。種別は第二世代だが、中身は第三世代にも劣らぬ機体だ。
「スモーク!? ……ぐっ!?」
注意を逸らすための囮。意図した通りに
彼女が『せいらん』への対処を始めた頃には、機体背面に被弾を示すマーカーをつけられていた。
「(破損の程度は……いきなり小破? 対抗機の主兵装であるライフルの口径は五十ミリ。私のものより小口径のはずなのに、こうも簡単に小破するのですか……?)」
あるいは、
「(戦車砲弾みたいに、ダーツのような形にし、加えて弾速を上げることにより、貫通しやすくしている?)」
考えている暇は無い。とにかく戦わねばならない。
相手は第三世代にも劣らぬ第二世代に、高い技量を持つパイロット。
対して自分は、パイロットの技量が高いだけで、機体は平凡な第二世代。
戦力差のあるこの戦いで、どう勝利を収めるか。
「……っ!? 何故そちらに信号弾を!?」
『せいらん』が突如、明後日の方向へ信号弾を発射した。色も、赤、白、緑と、規則性のあるものとは思えない。
「味方機への情報伝達? 信号弾で伝わるのでしょうか」
『ヨハンナ! 『つるぎ』がそっちに!』
「(マズいですね……。先輩が援護に来るまで、一対二……それも実質、第三世代機を二機相手にするようなものじゃないですか)」
片やマッハで動く最新鋭機。
片やそれに劣らぬ実力派。
「先輩! 全速でかっ飛ばして来てください! 私一人では厳しいです!」
『了解。こういう時、素直に先輩を頼れるのは良いことだぞ』
無線の向こうの
「先輩が来るまで、せめてもの時間稼ぎです」
片方だけでも喰っておきたい。ヨハンナは今まで誰にも見せなかったほど獰猛に笑うと、エンジン出力を最大まで上げ、突っ込んでいった。
「あの模擬プラズマブレードさえなんとかなれば……!」
クリストフは苦戦を強いられていた。高速で動き回るのはともかく、あのプラズマブレードのレプリカは、切りつけられれば一発で破損判定を喰らう代物。喰らうわけにはいかない。
「(ヨハンナからサポート頼まれてるし、ここは撒くか?)」
予備のハンドガンを抜き、二、三発射撃。特に精密に狙うわけでなく、水柱を立ち上げてロックを外させるのが目的だ。
「こんな雑なやり方で騙される訳ないだろうけど……」
ロックが外れた一瞬の隙を突いて、クリストフは逃走を開始した。が、
「ちくしょう! やっぱりダメか! いや、小手先の技術でどうにか出来るほど甘くないのは知ってたけど!」
再びレーダー照射を知らせるアラームが響く。右へ左へ機体を振るが、鳴り止む気配は無い。
「(……ちょっと待て。『つるぎ』の兵装、プラズマブレード以外になんかあるか? ハンドガンがあるかもしれないけど、あれはせいぜい射程千メートル。それも『最大射程』で『有効射程』じゃないから、別に脅威とは考えられない)」
プラズマブレードさえ破壊すれば良い。そう結論付けたクリストフは、『つるぎ』のプラズマブレードに狙いを定めた。
「……手元だ。この距離なら外さない」
ハンドガンの銃口が瞬き、寸分違わず『つるぎ』の右手に破損判定を与える。
余波で、プラズマブレードの柄も使えなくなった。これで『つるぎ』はほぼ丸腰だ。
「もらった!」
至近からのコクピットへの射撃。コクピット破損の判定を受けた『つるぎ』は、動力をプラズマエンジンからバッテリーに切り替え、戦闘区域を離脱して行った。
ストライダー 神楽旭 @kagura-Asahi
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