第9話 banrxucs 男爵

se+kan re dustutse kumpon kumsep era.

石でつくられた広大な広間である。


unfum elna meva honef pe+sxezo.

こんなところをエルナは初めて見た。


'no:vce vols' wamfig tevas ned ne+cazo.

「黒い狼」はなぜか笑いをこらえているようだ。


vekega ned mxuln hohoszo.

妙な余裕が理解できなかった。


gardoresi holtsum pakpigi del.

衛視たちは明らかに緊張している。


azi menvas del uldce yu:jenartiszo ers rxo:bin yuridgurf cedc.

彼らは老いた傭兵を恐ろしい魔獣のように見つめているのだ。


ligs legepes li:znalm abos.

まるで立場が逆のように思える。


gow,elna nafega.

だが、エルナは思った。


ers ned dalgam bac gardoresi sxuls uldonsuma go+zuszo nxal.

もし衛視たちが傭兵の強さを知っているのなら不自然ではない。


nomil azi payu sxelgo li cod uldons zemges dec zad reysizo.

たぶんもう彼らはこの老人が十人の悪党どもを殺したのを知っていたのだ。


du:ce ca:ri sekiga li mo:gan kumsepma tsasuncupo.

小さな音が暗い広間の奥から聞こえてくる。


un do:bun reysi sebas dustuma chofle.

一人の太った男が石の椅子に腰掛ける。


"az ers elnuvu+cas banrxucs,turas fores"

「このおかたがエルンヴッキャス男爵、テュラス閣下である」


un gardoresi yujugu.

一人の衛視が言った。


elna mevga lombufe re banrxucs tus reysuzo.

エルナは男爵と呼ばれた男を見つめた。


casxul nub tulra.

頭はほとんど禿げ上がっている。


caf ta tavma di:k gxudtowa li foy.

顔と体の肉はたるんでいるようだ。


vekava ci ned a:jsuzo.

年齢はわからなかった。


"hm"

「ふむ」


banrxucs yujugu.

男爵が言った。


"teminum ete"

「本当にお前だったか」


mevgo uldonsuzo du:ce,now heyigfe minitse.

老人を小さな、だが力のある目で見つめた。


"tirev re,yem yeselete del.abogiv payu zemte nalpesnxe"

「驚かされたな、また生き延びていたとは。とっくにどこかで死んでいると思っていた」


"vis kozfiv ci ned e+zema lamsuzo.banrxucs foreys"

「俺も自分の幸運が信じられません。男爵閣下」


elna kap tirega re.

エルナも驚かされた。


nomil banrxucs sxuls li foy 'novin vols'zo.

どうやら男爵は『黒い狼』を知ってるらしい。


"bi:nar,gardoresi!"

「去れ、衛視ども!」


banrxucs selogo.

男爵が命じた。


"gow,banrxucs fores..."

「しかし、男爵閣下……」


"ers vim se:lo! mende ya: cu?"

「これは我が命である! 問題でもあるか?」


"n,ne+do!"

「ご、ございませんっ!」


gardoresi socum tanjulm bines.

衛視たちはすぐに逃げるように立ち去った。


"yoy,chuchav ci tocho uldce cu+chazo"

「よし、これがお前と昔の話もできるな」


"ne+do.cuchav fog ned tocho"

「いや、俺はお前と話したくない」


"hm,eto zadfikuce reys uld sud.vo evig ra:cus"

「ふん、お前は昔から不快な奴だ。俺たちは仲間だったんだぞ」


"ya:ya.ete vim ra:cus.gow ete ned da:sxo."

「ああ。お前は俺の仲間だった。だが友達じゃあなかった」


"da:sxo...yem sadvato del solu:sale.ulf yu:jes cu?"

「友達ね……まだソルーサにこだわってるのか。それともユージェスか?」


banrxucs hures,gow caf pakpiga sekiga uld yu:jenartisma yurfa teg.

男爵は笑ったが、老傭兵の言葉を聞いて顔がこわばっていた。


"cod rxafsa era foy sulu:sama tansa"

「この娘はソルーサの娘かもしれん」


"teminum ers cu?"

「本当か?」


banrxucs menvas li elnama cafzo.

男爵がエルナの顔を凝視した。


"hmm,vekev,rxafsa mujnatum sagla solu:sale"

「うむ……わかるぞ、確かにこの娘はソルーサに似ている」


"ta tavma wastos ers mi:fe"

「それに体の特徴が一致している」


"tavma wastos..."

「体の特徴……」


banrxucs vinlipum neces.

男爵がいやらしく笑った。


"nxanute cod rxafsacho cu?"

「この娘とやったのか?」


"ne+do!"

「違うっ!」


uldce yu:jenaris meges foy.

老いた傭兵は怒ったようだ。


"ers da:vka! cemsoto ned cafma: kotsowa elnule dog"

「冗談だよ! 髪は白くなったが変わらんな」


"tom casma: kap mig kotsoga foy"

「お前の髪もだいぶ変わったみたいだな」


"ya:ya"

「そうだな」


banrxucs hures.

男爵が笑った。


"rxafsa,wob tom marna era cu?"

「娘よ、お前の名はなんという?」


"va...va erav elna.va erav sewruyuridresa"

「わ……私はエルナです。風魔術師です」


"sewruyuridresa...solu:sa ega: asroyuridresa teg"

「風魔術師か……ソルーサは火炎魔術師だったが」


"jinmiv fog tel"

「お前に聞きたいことがある」


"wob? erv colma sxumreys.dubemote cu?.nafato sup bamolin legepeszo"

「なんだ? 俺はここの領主だ。忘れたか? お互いの立場というものを考えるべきだと思うがね」


"zemgete fuln sxumreysuzo cez.ta tokugu cod banrxucs sxumasatzo tes"

「お前は前の領主を殺したらしいな。そしてこの男爵領を奪ったと聞いている」


"ers ned bazce fa:decnxe"

「辺境では珍しいことではない」


"gachig sxumito li cod sxumsatazo cu? era za:ce pe+sxe.to:js ers sa+gxan.jabce reysi yas a:mofe to:g"

「おまえはきちんとこの領地を治めているのか? ここはひどいところだぞ。街は汚い。ヤバイ奴が多すぎる」


"gow segate...um...magmetszo fuljalnxe ot.alov"

「だが昨晩、お前が……そう、汚物の掃除をしてくれた。感謝する」


"eto za:ce sxumreys"

「ひどい領主だな」


'no:vce vols" yujugu.

『黒い狼』が言った。


now elna vekeva cod banrxucs dutazges ned.

だがエルナはこの男爵は無能ではないと気づいた。


unfe,sxelgo li fuljalma ha:soma tu+koreszo.

最初に、彼は昨夜の事件の犯人を知っている。


dewce,vekes li tu+kores erig uldce ra:cus.

二番目に、犯人が昔の仲間であることを理解している。


ulf banrxucs nafes del fensum zakmes no:vce volsuzo.

あるいは男爵は『黒い狼』をうまく利用することを考えていたのかもしれない。


banrxucs ers ned jen ra:cus erig uldonsma 'uldce' ra:cus now.

男爵はいまは老人の仲間ではないが、「かつては」仲間だったのだから。

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