第11回 曹叡の即位

 漢文大系本、第3巻、66ページ。

 西暦226年。


 ◯魏主丕殂。僭位七年、改元者一、曰、黄初。諡曰文皇帝。子叡立。是為明皇帝。叡母被誅。丕嘗与叡出猟、見子母鹿。既射其母、使叡射其子。叡泣曰、「陛下已殺其母、臣不忍殺其子。」丕惻然。及是為嗣、即位。


 ◯魏主す。位をせんすること七年、元を改むること一、曰はく、くわうしよおくりなして文皇帝とふ。えい、立つ。是れを明皇帝と為す。叡の母、ちゆうせらる。かつえいでてかりし、の鹿を見る。既に其の母を射、えいをしての子を射しむ。えい、泣きて曰はく、「陛下、すでの母を殺す。臣、の子を殺すに忍びず」と。そくぜんたり。ここに及びてり、位にく。


 ◯魏主のそうが亡くなった。七年のあいだ帝位をせんしようし、元号を一度改めた。その元号は、こうしよという。(漢王朝は五行思想で火にあたるので、それに代わる魏は土にあたる。よって土の色たる「黄」の初めと名づけた。)おくりなを文皇帝という。子のそうえいが即位した。これをめい皇帝という。そうえいの母はちゆうさつされた。以前、そうそうえいとともに外に出て猟りをしたとき、母と子と連れだってゆく鹿を見つけた。そうは母親のほうを射てしまってから、そうえいに子どものほうを射させようとした。そうえいは泣いて言った。「陛下はもう母親のほうを殺しました。わたくしは子どものほうを殺すに忍びません。」(そうえいは母を失った子鹿を自分自身になぞらえたのである。)そうは哀れに思った。そこでかれが後継ぎとなり、即位することになったのであった。

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