小辞典~3章~
・YDM-W54【二足戦車】
ユーゴスラビア連合国産の多脚戦車の一種。通称「ゴブリン」
2035年に起きたアドリア湾紛争において投入が確認された装甲兵器で特徴的な逆間接型の脚部を2本備える。
元々は市街戦での対戦車地雷の回避を目的として設計されたものであったが、その設地面積の少なさと高い視点から不意の遭遇戦、主にゲリラ戦において本機は真価を発揮した。
35㎜速射砲と12.7㎜機関銃をデフォルトの武装とし、遮蔽物の上から相手の頭上に砲弾を浴びせることができ、対人、とりわけ民兵組織に対して絶大な戦果を挙げた。
しかしFCSの精度向上と関節部の脆弱性が重なり、同格以上の装甲や機動性を持つ相手には運動性に反比例するかのように低い機動性が災いし、一方的に蹂躙されることも多かった。
現在ではその殆どが正規の軍の手を離れ、テロ組織や一部の財人の私兵集団に使用されるのみである。
・SEG-45
電気エネルギー拳銃、2081年以降からの日本警察官の標準装備。
二股に分かれた矢じりの様な弾頭を射出し、着弾と同時におよそ200万Vの電気を放射する。
鋭利な先端が体に食い込み筋肉に電気を直接作用させることで効果を上げているが、これは生産国である中華民主権連邦国内で出没する心肺機能を機械化したサイボーグ犯罪に対抗するために開発された為で、日本国内での使用に際しては被疑者を死亡させてしまう事例が数多く報告され問題となった。
現在では警官が携行する際の持ち出し確認時に電子ロックによって出力を制限する決まりになっており、これを解除するためには高度なハッキング技術が必要になる。
・BEX-R9
正式名はAGK-R9。ロシア共和国で2029年まで正式採用されていた5.56㎜自動小銃。
堅牢なボディと安定した動作から北ユーラシア連合の国家群にも広く出回っていたが、50年代の敗戦による軍縮で世界各地に流出。
現在は新型のKEF-66に正式採用が移った為、R9を使うのは沿岸警備の閑職に回された隊員か犯罪組織のどちらかである。
「BEX」は国連によって指定された「高犯罪係数銃器」に付けられる記号。
・G44
ドイツ製アサルトショットガン。愛称は「カミソリ」
マガジンと銃本体に計9発の24ゲージバックショット弾を装填することができる。
最大の特徴は前と後ろの両方にポンプ出来るフォアエンドセレクターという機構。これに連動する形で銃口部のチョークが変形し、前に押し出せば縦に長く、後ろに引けば横に広がりながら小弾が拡散する。
室内における制圧力強化と、散弾銃の苦手とする屋外での対空射撃能力の両立を狙った設計であったが、当のドイツ警察からは大不評を買い採用されず、結果生産された600丁の内半分がASA経由で日本に輸入された。
カミソリという愛称は横拡散モードで放った小弾が被疑者の頭上を掠め頭髪を根こそぎ削り取ったという噂から広まった渾名である。
・70式擲弾投射機
連装式の45㎜グレネードランチャー。
縦に並んだ2本の砲身からグレネードを連続・同時発射できる。
北ユーラシアとの戦争後、日本で設計された新機種で、警察が使用できる火器の中では国際法ギリギリの加害範囲である。
・IAB-2055【バッシュ】
アメリカ、テトロイア社製ギアスーツ。
右肩の汎用マウントラッチとパワーフィストが標準装備。120㎜砲の直撃にも耐える正面装甲が特徴だが発展性の低さや脱出機構の複雑さが不評。
テストモデルも含めて1000着分が先行開発されたのみで後継は制作されていない。
1課は設立時にASAから購入した本機5着分を整備改修し続けだましだまし使っていた。
・
年齢:22歳 身長:171㎝ 体重:67㎏
警視総庁特殊装甲1課実働班隊員の1人でコールサインは11。
警察学校卒業からそのまま特装1課に配属された若手隊員。在籍歴は2年7か月で榊や西園寺より古株であるが、コールサインが大きいのは編入直前に開いた実働班枠に名前順で組み込まれた為である。
年相応の素直さと仕事への前向きな姿勢が好感的で、その柔らかな表情から配属当初は警視総庁舎の内勤の女性警官や屯所の職員から”高い評価”を得ていた。
しかし本人は「悪を摘み取る正義の執行者」としての警察官像に強いあこがれを持ち、周りの異性にちやほやされるよりも実際の現場への出動を強く希望していた。
班員の減少に伴う人事の再編により彼の望みは短期間で実現することとなったが、その望みの本質を達成することはついに叶わなかった。
屯所の自室ではなく郊外のアパートで独り暮らしをし、総長の訓練に間に合わせるように自転車で通勤をするという根性の持ち主で、榊が仁藤に次いで憧れる直属の先輩であった。
Blind I《ブラインドアイ》 ~1~ 社 光 @rin2501
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