なぜ男の娘を書こうとしたのか?

 いろんなジャンルに挑戦してきた僕ですが、なぜ男の娘を書こうとしたのか。今回はその経緯をお話していきます。


 もちろん男の娘という属性は古くから知っていました。結構前からありますもんね。(17年前にすでにあったような)

 でも「よし、書くぞ」と思うに至るには、動機がありません。まずは「書いてみたいなあ」と思えるような動機が必要です。動機は、『着想』を得なければ発生しません。

 4/1、唐突に着想を得ます。それはフォロワーさんの夢見里ゆめみしりゅうさんのあるツイートを見たときのことでした。

 彼女はエイプリルフールネタとして「実は私、男の娘だったんです。今までの自撮りもすべて女装だったんです」というツイートをしていました。(確かこんな内容だった気が。間違っていたらすみません)


 それまでは正直エイプリルフールがあまり好きではありませんでした。なぜかって、僕、めっちゃ騙されるんですよ。だから4/1は一日中気が休まらない。Twitterなんて開こうものなら嘘が横行しているもんだから疑心暗鬼に陥ってなにがなんだかもうわけがわからんくなるのです。

 でも、彼女のそのツイートは素直に「いいな」鼻血が出ると思いました。

 こんなにかわいい嘘になら、騙されてみたいな。とも。

 それにこんなにかわいい子なら男でも構わないよな。性別なんて凌駕するよな。むしろ付き合いたいよな。ええ。ええ、そうです。はい。え、いいんですか? 本当にありがとうございました(なにが)。

 と思考がfly to the sky して、男の娘ってよいなって思ったんです。


 そういうわけで、そこから頭の中に「男の娘ものを書きたい」という願望が芽生えました。

 この時点ではまだ願望です。


 そして来たるカクヨムコン。

 2019年のカクヨムコンは『盛り上げる』がスローガンでしたが、2020年のカクヨムコンテストは『犯行声明』というスローガンを掲げておりました。具体的には最低20作の新作を期間中にぶっ放して運営に混乱を与えるというものです。投稿というよりはテロ行為の感覚でした(大迷惑)。

 じゃんじゃん作品を書いていくうちに当然ネタは枯渇……しそうになると「あ、これ書きたい」って感じでバカスカ書くことができました。そして「それなら前から気になってた男の娘ものも書いてみよう」と思いました。

 基本的に「書けるかな?」ではなくて「書けるかどうかじゃなくて書いたら書けることになるんだよ」というスタンスなので書こうと決めたときの僕は怖いものなしです。ダメならダメ。それも勉強と思いますし。


 ——かわいい男の娘に騙されたい。

 エイプリルフールのときに思ったことが不意に蘇りました。


 そして物語の構想を練っていくうちに、思考の中に後輩が現れます。リアルの。

 彼は僕が嫁と付き合っていることを明かしたときに「はぁっ!? なんであんな女と付き合ってるんですか!? ダメですって! 目を覚ましてください! 詩一シーチ先輩!! そうだ、僕と一日代わってくださいよ! そしたらあのクソアマをぶん殴って別れてきてあげますから!」と言いました。激しいですね。愛おしいです。

 語弊のないようにフォローすると、彼は超絶いい子です。心から僕の心配をしているだけなんです。でも、なにがあっても彼女を幸せにしたいという願いがあったので、「まあまあ、涅槃ニルヴァーナのためだと思ってさ」と返しました。

 そんなことを思い出したものですから、「もしも彼が男の娘になって僕を誘惑したら?」というifが脳内を駆け巡りました。

 だからもうストーリーの骨子は彼と僕とのやりとり——つまり実話に近いですね。


 あとは、ハラハラドキドキがあればエンタメとして成り立ちますから、もともと構想に在った『男の娘が騙す』を基盤に置きます。


 この時点で『先輩のために僕、男の娘になっちゃいました!』というタイトルが決定します。

 そしてTwitterで「こんな感じのタイトルで書きますー」と宣言したところ、『無限の死のアリス』を共同制作したmiyaさんからリプライが。


「いいタイトルですね! ロゴを作ってもいいですか?」


 女神ヴィーナスかよ。

 いや、女神ゴッデスかよ。

 もちろん快諾です。むしろお金払わなきゃいけないレベルです。

 ロゴを作っていただけるならさっさと創って見せないと。

 俄然燃えながら制作に取り掛かりました。


 土台を決めていく作業のときに、リアルの創作仲間の言葉が蘇りました。

「主人公は欠点を持っていなければいけない。そしてその欠点のせいでどん底に落ちなければいけない。それを乗り越えられるから主人公はハッピーエンドを手に入れられる」

 また、もともと持っていた「長所は短所であり、短所は長所である」という考え方がスライドして当てはまっていきました。

 この場合は主人公——柚笠ゆかさ輝斗てるとは、『先輩のためなら手段を選ばずなんだってやる』というのが長所であり短所であるということで、その欠点(美点)のおかげで【起承転結】の【起】から【転】直前(15ビートで言うところのミッドポイント)までは物事が順調に進んでいきます。しかしその欠点(美点)のせいで柚笠輝斗は失意に暮れる羽目になる。それをどう乗り越えるかは【転】と【結】の間の成長に掛かっています。(15ビートで言うなら【すべてを失って】【心の闇】というやつですね)


 こうして夢見里さんと後輩とリア友のおかげで創作は順調に進みました。

 しかし、せっかく創っても集客できなければカクコンを生き抜くことはできない。


 そこで! miyaさん特性のロゴ!


 これが! ほんとに! すごいぃぃいいい!!


 出来栄えがすごいって言うのはもちろんのこと、ポップな雰囲気のおかげで見る人が「おもしろそう」と目に留めてくれるんです。

 実際コメント欄にも「ロゴに惹かれて読みに来ました」という言葉も頂きました。

 この『先輩のために僕、男の娘になっちゃいました!』に人が集まったのは、ぶっちゃけロゴのおかげです。

 いや、これは自作を卑下しているわけではないんです。本当に、魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこっていうか、とんでもない数の作品がひしめくカクヨムコンではんです。そのあと☆が入るかとか感想付きレビューを頂けるかというのは作品のおもしろさなので、僕の実力ですけれども。


 このカクヨムコンテスト短編部門。

 聞くところではどうやら1人3作までしか中間選考を通らないらしいです。つまり僕の場合は必然的に19作落ちるわけですね。(もっとかな?)

 僕の中間選考通過作品を見てみると、どうやら☆が多い順に3作通ったっぽいです。(印象の話なので実際はどうかわかりません)


『瞳の魔女と空輝の歌唄いシャシエ』

『3650回目の死にたい、』

『先輩のために僕、男の娘になっちゃいました!』


 こうしてみると、タイトルの温度差すごいな。


 もしもロゴがなかったら、別の作品がここに載っていたでしょう。そうしたら、受賞はなかったと言いきれます。

 だから本当にもう、miyaさんのおかげなんですよ。

 作品を創れたのは夢見里さんと後輩とリア友のおかげで、中間選考通過できたのはmiyaさんのおかげです。もちろん読んでくださった読者の方々のおかげって言うのは言うまでもないですが。

 本当にありがとうございます。

 この場を借りて御礼申し上げます。



 と、まあ「なぜ男の娘を書こうとしたのか」というところから創作術を経て、最後は感謝の言葉になったわけですが、こんな感じで作品は出来上がって受賞しました。そう言う説明でした。はい。


 結局創作って言うのは自分一人ではできないなって思います。

 書くのは一人だけれど、それに至るまでのプロセスに確実に影響を与えた誰かがいる。

 リアルで仲良くしてくれる人はもちろんのこと、Twitterで仲良くしてくださる方々もまた、僕の創作の助けになってくださっているのです。

 素晴らしき創作仲間たちのおかげで、僕はまた創作を続けることができます。


 ここに出てきた素晴らしき人々のことが気になりますか?

 では、活動拠点のURLを貼っておきますね。


 夢見里龍さんのカクヨムURL

 https://kakuyomu.jp/users/yumeariki


 miyaさんのTwitterアカウントURL

 https://twitter.com/miyachoco0_0



 ……え? ああ。後輩とリア友は「ネット社会怖い、ぴえん」というタイプの人たちなのでここでは紹介いたしません(笑)

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