主人公がモテる系作品における、男性向けと女性向けの違い

 ふと疑問に思って、僕なりに考えたことなので確固たる真実ではないし、なんの裏打ちもないと言うことだけは先に言っておきます。

 あと、これは主人公がモテる系に限った話なので悪しからず。



 主人公がモテる系の作品で、男性読者を想定したものと女性読者を想定したものに、大きな違いを感じた。

 それは、恋愛対象のキャラクターに求められるステータスだ。



【男性向け作品】(主人公=男=平凡或いは平凡以下)

 恋愛対象者はめちゃくちゃ可愛い。スタイルもいいし、場合によっては巨乳。素直で聞き分けのいい性格。(ネガティヴなのに主人公の言葉はなぜか届いて世界が変わったようにポジティヴになる)

 なのに非モテ。彼氏なし。エッチもしたことない。なんだったら付き合ったこともない。

 周りにイケメンはいない。

 主人公のことが好き。


【女性向け作品】(主人公=女=平凡或いは平凡以下)

 恋愛対象者はめちゃくちゃカッコイイ。スタイルもいいし、オシャレ(オシャレじゃないにしてもダサくない)、清潔感もあるし、ちょっと毒も吐くけどそれは親しさの表れだし、表情見てればわかるよレベルな性格。

 だからモテる。同級生からのみならず、後輩からも先輩からも告られまくる。なのに彼女なし。めちゃ積極的だから童貞なわけないんだけど、たまに童貞なんじゃないかって思っちゃうくらい初心うぶなときがあって萌える。

 周りに自分よりカワイイ・綺麗な人ばっかり。

 主人公のことが好き。



 だいたい最初と最後の一行は絶対一致していると思う。一番違う所は【男性向け作品】が「なぜかモテない」のに対して【女性向け作品】が「だからモテる」という点。


 一瞬【女性向け作品】の方がリアリティがあるのかなって思ったんだけど、じゃあなんでそのモテまくりの彼にパートナーが居なくて、かつ主人公よりかわいくてきれいな女性の申し出を断ってまで平凡な主人公のことを一途に好きでいられるのか。という部分に言及するとあまり説得力がなかったりする。

 もちろん、そこは作者の腕の見せ所なので、物語で説得してもらいたいところだけれども。


 こう、上記した二つの作品を見比べて思ったのは


【男性向け作品】

 カワイイ→モテない→主人公が好き

     ↑ここが矛盾(ㆁᴗㆁ✿)


【女性向け作品】

 カッコイイ→モテる→主人公が好き

          ↑ここが矛盾(ㆁᴗㆁ✿)


 ってなって、矛盾しているところがズレてるだけでそう大して変わらねえんじゃねえかなーって思った。なので別にここでは矛盾していることには言及しない。ちゃんと説明できてる物語と勢いだけで押し通している物語が存在するので細かく突っ込んでいったらどうしようもなくなるので。


 で、じゃあなんでそんな違いが生まれるんだろうって考えたときに、それは男性と女性の価値観の違いが顕著に表れてるんじゃねーかなって。


 思うに男性は、カワイイ子と付き合えることが重要であって、周りの状況はあまり考えてない。対して女性は、相手がカッコイイのはもちろんだけど誰からも認められるカッコよさでないといけないし、もっと言えば、彼が居るステージそのものも含めて付き合いたいのだろうと思う。


 だから、例えば

・貧乏

・みんなから嫌われている

・得意なことがなにも無い

・性格も良くない(読者に対して合わない性格)

・不潔

・付き合っても幸せになれない

・カワイイ(カッコイイ)

 という設定のキャラクターは、【女性向け作品】にはないのではないだろうか? 或いはあったとしてもかなりのレアケースで、他の作品との差別化を図るためにわざわざ生み出されたものだろうと思う。

 大してこういう設定は【男性向け作品】にはまあまあある気がする。


 心理学的には、男性は女性に対して『とびぬけた美点』を求めるのに対して、女性は男性に『欠点のなさ』を求めるらしい。

 それが現れているようにも思える。

 

 そして女性は!! という特別感が欲しいのだと思う。その中で認められるということは、つまり自分の承認欲求が最高に満たされるわけだから、これ以上ない「ざまあみろ!」が味わえるわけだ。カタルシスね。

 対して男性は!! という特別感が欲しいのだと思う。ここにカタルシスはない。どちらかと言えば自己満足のたぐい


 この「ざまあみろ」を味わうためには、当然『彼』はみんなから好かれる人物でないといけない。彼と付き合った瞬間に「羨ましい!」「妬ましい!」以外にも「あの彼が認めた女ってことは、あの人めちゃくちゃ凄い人なんじゃない!?」と言う風に事態が転び、今までの誤解などが一気に解け、主人公自体の人気も上がらないといけない。

 だから『彼』はもちろん大好きな相手ではあるのだけれども、自分の成功に繋がる『キーマン』でもないといけないのだ。

 こう、なんていうか、ストーリーと恋愛が複雑に絡み合ってないといけないのだ。


 対して男性はこの辺りは分離している。

 前述したとおり、とにかくカワイイ女の子と付き合えさえすればいいのだ。付き合うこと=ゴールだ。もうすでにゴールしているのだから、それによってなにかが好転するとかって言うのは期待していない。



 この辺の価値観の違いは、日本の今までの文化が強く根差しているのかなあと思う。

 ここからする話は、別に男女差別じゃあなくて、今までの日本がそうだったってだけの話なので、「この人どっち寄りの発言するの?」みたいな目で見ないでほしい。


 室町時代以降の日本と言うのは、中国の影響を受けて家父長制が長く続いている。男が仕事をして女が家事をする。家長は男なので決定権は男が持つ。というような。

 これって、ようは女性が一人で『成り上がる』ことができない仕組みなのだ。対して男性はやる気さえあれば一人でも『成り上がる』。

 つまり女性にとって『良いパートナー選び』=『幸せ』なので、先のように恋愛対象者は誰からも良いと思われる人間、つまり出世などが望めて自分を幸せにしてくれる相手でないといけないのだ。家事をどれだけ頑張っても夫の収入が上がるわけでもないし。

 対して男性は自分が相手を幸せにできるように頑張る側なので、上の式は当てはまらない。


 こういう日本の(私は悪しきと言いたい)習慣、社会体制などなどが、小説をはじめとした娯楽が求められる物語にも深く根差しているのだなあと思ったわけです。


 

 なんか最後の方で社会派っぽいエッセイに成っちゃった気がする。


 まあ、これも全部想像でしかないんで、話半分でお願いしますね。

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