下読みの人のお話
もう10年以上前のお話なんだが、下読みをしてるって方のお話を聞いたことがある。
その中で二つほど興味深い内容があったのでご紹介させて頂く。
【改稿ポイントそこじゃない】
一次選考下読みをしていたその方は、一次を通そうかどうか迷った作品があった。結果落としたのだそうだが、迷った作品だったので記憶には残っていた。
その次の選考でもまた同じ作品が送られてきたが、どうやら改稿されているようだった。
「今回面白くなっていたら通そう」
その方はそう思ったそうだ。当然である。前回は迷いに迷って落としたのだから、少しでも面白くなっていたら通すに決まっているのである。
しかし中身を読んで愕然とする。前の方が面白いのだ。というのも、くだくだしく説明がプラスされているだけで、ストーリーなどの変更はなかったらしい。
結果その方はその作品を落としたらしい。
下読みの方の意見が作者に届かないのがなんとも歯がゆい。
しかし結果論だけ言うなら、なぜその人の作品が通らなかったのかというのは明確だ。その人は「自分の作品がなぜ通らなかったのか」を把握できていなかった。
恐らく作者は最初に落ちたときにこう思ったはずだ。
「きっと設定などが下読みの方に伝わりにくかったのだろう。ちゃんとした説明をして解ってもらえば、作品の面白さが伝わるはずだ!」
だが、そうではなかった。問題はそこではなかったのだ。
今回は残念だったが、ここではある種の希望もある。それは「自分の落ちた作品も、もしかしたら迷った作品だったのかも」と言うことだ。改稿のポイントさえ間違っていなければ、一次選考は通せる力がある作品なのかも知れない。
【冒頭の面白さ】
その方は、何十作ある作品を、まずは次々に冒頭だけ読んでみて、面白いと思えた作品と面白くないと思った作品とに分けて、それからまた読み始めると手法を取っていた。もちろんすべての作品に目を通す。
結果、冒頭だけを読んで面白くないと思えた作品は、やはり最後まで面白くなかったそうだ。
冒頭が面白い作品だからと言って最後まで面白いというわけではないようだが、確実にそこで言えるのは「冒頭を面白く書く技術が備わっている人は、面白いストーリーを書けている可能性が高い」そして、「冒頭を面白く書く技術がない人は、途中で盛り上げる技術もない」ということだ。
当然例外はある。
また、長期連載物だとこの限りではなく、途中で作者の技術が上がれば当然面白くなるはずである。
これはあくまで公募の下読みの方のお話なので、web小説とはまた事情が変わってくるので、該当者ではない人はあまり真正面から受け止めない方が良い。
上記を踏まえ、公募に送ろうとしている人は、冒頭が面白く書けているかどうかだけでも確認してみるといいかも知れない。自分自身ではわからないというのであれば、周りの人に最初の1ページだけ読んでとお願いしてみるのもいいかも知れない。無理に全部を読ませるのはとても申し訳ないことだが、1ページだけなら頼める友達もいるのではないだろうか。
その際には必ず、その人が信用に足る人物かを確認するのを忘れずに。(罵詈雑言浴びせられるだけの可能性もあるので)
あ、最後に。
これは10年以上も前のお話である。
そして下読みの方とはいえ、一個人の主観でしかない。
信じる信じない以前に、今はもう通用しない話かもしれない。
——しかしそれでも僕が今ここでわざわざ書いたのは、こと公募においてでは、今でも通用することだと感じたからなんだけれども。
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