根本的に面倒くさい奴

 僕は大変面倒くさい奴だ。


 【窓の無い地下室から、蒼天に浮かぶ太陽を穿つ】というエッセイを読んだことがある人は、僕がどれだけ面倒くさい奴かはお察しだろう。


 ここでは、ライトにどれだけ僕が面倒くさいのかを説明しておこうと思う。ほら、もうこの行いが、この文面でのやり取りが相当面倒くさい。いや、その辺はこの際考えないでおこう。



 分数の足し算を思い出してほしい。小学生の頃にやった分数の足し算。

 あれの理論を教えられるとき、必ずといっていいほど「ケーキ」が出てくる。ケーキなのは問題ない。「なんでケーキなんだよ!」っていう程末期的ではない。


 さて、六等分したケーキが三つある。

 そこに更に六等分したケーキが三つ加わると、どうなるのか。と言うような問題。


 数字に直すと


 3/6+3/6=6/6


 とこんな感じ。

 ここまでは良い。

 問題はこの先だ。


 6/6=1


 おいちょっと待て。

 なんで6/6が1として扱われるんだ。

 考えても見て欲しい。1はホールケーキ一個だ。そして6/6はホールケーキを一度6分割してまた1個にまとめた、切れ目のあるケーキだ。


 同じか? いいや、決して同じではない!


 もっと考えても見て欲しい。1の方のホールケーキは切れ目が入ってない、まだ誰も触れてない新品のケーキである。だがしかし、6/6はどう考えても人の手が一回は触れている。いわば中古的ケーキと言えよう。

 その二つのケーキがショーウィンドウに並べられて、同じ値段で売られているのだ。


「ちょっとなにこれ生クリーム剥げてんじゃん! なんで同じ値段なの!?」

「いえ、これも1なので」

「ふざけるな!」


 と言ういざこざが今にも聞こえて来そうである。


 しかしショーウィンドウに置かれてお客が見れる状態ならまだいい。通販ならどうなるだろうか。なにせ、6/6を1にしちまおうぜって考えるような奴らだ。写真には1のホールケーキを載せておいて、実際注文して届いたら6/6の中古ホールケーキ——いや、1/6ショートケーキ六個が送られてくるなんてこともあるかも知れない。


「誰だぁあああ! 切れ目を入れたのはー! 嫁の誕生日ケーキなんだぞ! その切れ目に間違ってローソク突き立てたら、崩れてローソクが落ちちゃうでしょうが! ああ!? ふざけるんじゃあねえ!」


 ああ! 聞こえる……! どこかの旦那の悲鳴と、そのあとの奥さんの超でっかい溜め息と、平謝りする声と、いいから、もういいからと半ば諦め虚脱に陥っている声が……!

 6/6を1として扱っていいと誰かが決めたばっかりに!


 あー、もう絶対僕は納得できないね。こんなの数学者の怠慢による罪過じゃあないか。


 6/6+8/8=2


 でもないよ。


 6/6+8/8=6/6と8/8が隣り合っている状態


 だよ。



 ——などと考えてしまうし、それが納得できないと全く飲み込めないっていうくらい、僕は面倒くさい。

 小学生の頃にこの面倒くささが発動していたら、多分超絶頭の悪い子になっていたことだろう。てーかその前に授業が進まない。僕だけ別室で授業を受けていたかも知れない。

 発動が、中学生辺りからで良かった(良く無い)。

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