第2章

私の学校では、カップル同士はジャージを交換して相手の名前の付いたものを着る風習がある。そうすることで声に出さずともつきあっていることを周りにアピールしているのだ。


球技大会の日、Kは得意のバスケやハンドボールで活躍し、キラキラと輝いていた。私はそれをみて「人を好きになるとその人があんなに輝いて見えるんだ」とさらに実感していた。

Kは球技大会の実行委員だった。そのため閉会式が始まるのをみんなの前で待っていた。しかしまだ始まりそうな雰囲気ではなく、周りはざわついていた。そんな時だった。

「KのジャージSの名前じゃん!」

誰かがそう言った。Sのジャージを見るとそちらはKの名前になっていた。私は2人がつきあっていたことをはじめて知り、衝撃を受けた。そして呆然としてただただKの顔を見ていた。それに気づいたKは私の虚ろな目に映る視界の中で、私に向かって手を振り、目を合わせて笑ってくれた。優しく、あったかい、「大丈夫?」とでもいいそうな笑み、そして「Sと付き合っててもHとは相変わらず仲良くする気だよ」というような視線だった。

あの時、目を合わせて笑ってくれなかったら私はショックでもうKのことを好きではなくなっていただろう。

しかし、あの笑顔と優しい目を見てしまったらもう好意を止めることはできなかった。

私は、ますますKを好きになってしまった。

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美しい月はまるで私の恋心 @hahahappy2004

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