「詩集 永劫」(10月)

舞原 帝

31.下流にて

常識を拾っては捨て拾っては捨てを繰り返し

常識ある人間になろうとした

ところが選り好みしたのがまずかったのか

結果として常識の欠けた人間になってしまった

焦燥感からなんとか人間性だけでも固持しようと

自負心を根とし自我を芽生えさせた

それでも成長の要となる水が下流のものだった所為で

自負心は腐ってしまった

次の瞬間には自我が崩壊し固辞できなかった人間性が消失した

残ったのは非常識だけとなった


失くした人間性は

赤の他人に理解できるような単純なものではないと自負していた

でもだからと言って複雑なものという訳でもなかったから

私が下流にいる事に変わりはなかった

今更上流どころか中流も目指せずにいた私は

いつも中流の方を目を細め見ているだけで

上流から流れてくる常識人の言葉が理解できなかった

でもだからと言って別段何がどう困るという訳でもなかった

人間性はなるべく隠すようにしていたから

そういう意味でも自負が生まれるのも普通だろうと思った


非常識な私はまた下流の水に口をつけた

腐った自負心をその近くに張り自我の再生を試みようとした

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