嚇し鬼

安良巻祐介

 

 色鮮やかな賑やかし火を吐きながら回る南国の嚇し鬼の面。観光地で強盗除けにと買って以来、押入れの奥で埃をかぶっていたそのお土産を、ほんの気まぐれで引っ張り出して来て床の間に据えていたら、いつの間にか手が生え足が生え、畳の上に腰を据えて、逆牙の間に煙管など咥えてプカプカやりながら、「鬼は豆にも外ならず、内なる鬼は豆要らず」等々、他愛のない事々を喋るまでになった。最初のうちは元に戻そうと躍起になっていたが、そのうち疲れ切って、また嚇し鬼の面に意外と愛嬌のあることもわかってきたため、今では飯と洗濯と火の番を交代でやることを条件に、奇怪至極な居候との呑気な暮らしを楽しんでいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嚇し鬼 安良巻祐介 @aramaki88

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ