【交換小説】カタテノツバサ
平城山 松前
面と役とフレンズと
この体になってから一週間、か。几帳面に日にちを数えてる私も私だけど。ただぶらぶらしてるだけはあきてきた。何かすることはないか?
「あれ、これは…」
私がふと本棚に目を向けると「にっき」と書かれた本を見つけた。多分前の世代の『私』の日記だろう。周りのフレンズに違和感を持たせないためにも読んでおこう。
「この子はよくお面を作っていたんだね。」
私も家族があんな感じだからな。幼少期はよく稽古とかをやらされたっけ。あの稽古辛いしそれよりも面白そうなものを見つけたから抜け出してきたんだ。あの頃の知識が役に立つときが時が来るとは思いもしなかった。
面職人ではない私に良いお面はできるのだろうか。いや、やってみるしかない。
まずは木片を用意して…削る道具ってどっかにあるか?あった。
「よし、じゃあ始めようか。」
〜数十分後〜
「できた…!」
目の穴も口の穴も開いてない真っ白なお面。これはお面と言えるのか?まあいいや。
お面作成に集中していたら時間が結構経ってしまった。今は13時頃だろうか。
「日記の続き読むか。」
何故私がここまでに日記に固執するのか。それはこの子の性格を読み取るため。そしてそういう性格の『役』を作ってなりきる。ただ、そのままの性格じゃつまらない。何かアクセントをつけよう。
日記を読みふけるうちに夜になってしまった。この姿の動物は普通夜行性なのだが、『ヒト』の習性が残っているためか夜は眠くなる。しょうがない。寝よう。
〜朝日の登る頃〜
今日で8日目か。忘れないように何故この姿になったか思い出しておこうか。
私は稽古を抜け出したのち色々なことを勉強した。その時、私は分子がどのような構造になっているかに興味を持ち、大学も色々な分子の構造を解明する学部に入った。
大学3年の頃だろうか。国から声がかかり『サンドスター』についての研究に参加することになった。私が彼と出会ったのはその時だった。
サンドスターの構造式を解明するのは無理難題かに思われたが、少しずつ解明していった。
まだ少しの謎は残るが、85%くらい解明した時に『サンドスターを作る』というチームに入った。
サンドスターを作るというのはもちろん難しい話で、何日も徹夜した。
その時彼が作ってくれたのがこの料理だった。私はこの料理に何度も救われた。
数ヶ月後、私たちはサンドスターに似た物質『サンドスターα』を完成させた。それをクリホクエリアで活用し『水中生物のフレンズがどのような姿になるか観察する』実験や他にも色々な実験をする予定だった。しかしそれには欠点があった。
まず一つ。このサンドスターに反応したフレンズは突然変異を起こした。理由はいたって簡単。サンドスターαはいわば『85%サンドスター』である。いくつかの成分が足りていないのだ。
『普通でない』フレンズが公の目につくのは収益の減少につながるのでクリホクエリアは隔離された。
ただ隔離されても何が起こっているかわからないと怖いので誰かがクリホクエリアに送られることになった。
また、二つ目の欠点はこのサンドスターαは一つの固体にある一定のモル数以下の時にしか安定せず、それ以上あると急激に反応し小さくなろうとすることだ。
しかし私たちは『大きく作りすぎた』。本当はその時に『砕いて小さくする』のが一番良い対処法だったが、反応が急激すぎたのですぐ小さくなってしまった。
では何と反応したのか。私は家でとある動物を飼っており、その遺伝子と反応したらしい。
が、前にもいった通りサンドスターαはいわば『85%サンドスター』であり『フレンズ化するには成分が足りない』のだ。
何が足りなかったのか。それは『本当はサンドスターの成分で用意されるヒトの器』だ。それの代わりになったのはもちろん、その遺伝子が付いていた私だ。
ちょうどクリホクエリアに送る研究員を探していた時だったので、ちょうどいいから私が送られることになった。
彼との遠距離恋愛はここから始まった。しかし私はフレンズになってしまった。この恋情を忘れてしまうかもしれない。と彼に伝えたらそれでもいいと言ってくれた。
だから私はクリホクエリアの図書館に派遣され、どんなフレンズが生まれたかとどのような突然変異が起こったかメモすることを任命された。
そしてクリホクエリアのフレンズにはこの『図書館』という場所に行けば自分が何のフレンズか教えてもらえるという噂を流し、ここへ来させるようにした。だから…
「あの…誰かいますか?」
「はい!今行きますよ!」
やっと最初のフレンズが来た。けど、役はまだ完成してないから隠しておこう。
〜数十年後〜
もう『ヒト』で生きてきた時間よりもこの体で生きてきた時間の方が長くなった。役も板についた。しかし、色々なフレンズが来るので飽きることがない。そのかわり忙しくなったので何故この姿になったか思い出す回数が減り、今では忘れてしまった。
たまに『ヒト』だったのは夢だったのではないかという疑問も湧いてくる。
いや、そんなはずはない。私はこれらは絶対に忘れない。大丈夫。私が『ヒト』だった頃の名前も覚えてる。この論文をなぜ書くか、どんなことを題材にしているテーマか、そしてなぜ完成させないといけないかも覚えてる。そしてこのレシピのことを誰が作ってくれていたかも覚えてる。また食べたいな。
【交換小説】カタテノツバサ 平城山 松前 @narayama_masaki
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