ごんべい


 眼前で微笑む貴女は、とても輝いていた。


 そのきらめきは、星。夜空に点々と輝く、美しい星々の輝きのようだった。


「☆」


 貴女の喋る言葉は、私にはよく分からない。

 だって、あなたは違う惑星ホシからやってきたんだものね。


 私たち人間によく似ているけど、貴女は私にはない翼を持っている。

 背中に生える羽は煌めいていて、それはまるで天使のようだった。


「☆」


 ことばは通じなかったけど、私たちは友達になれたのかな。もしかしたら、それ以上に仲良くなれたのかもしれないね。

 貴女が微笑むと私もなんだか幸せな気持ちになって、心が暖かくなった気がしたから。


「☆」

 

 きっと私はこの世界に生まれたことが間違いだったのかもしれない。

 私がそう、悲しそうに呟くと、貴女も悲しそうな顔をして、そっと私を抱きしめてくれた。


「☆」

 

 この世界に居場所がないと思ったのは、私が中学生ぐらいの頃だったかな。私は誰かと仲良くなるのが苦手で、それに加えて要領も悪くて、誰からも疎まれていた。

 だから、よく空想の世界に逃げ込んで、両親にもよく怒鳴られたっけ。もっと頑張れ、逃げるなって。


「☆」


 私には、何もできなかった。本当に、息苦しい世界だったんだ。この世界のモノになにも興味が持てなくて、私は本当に生まれる場所を間違ったんだったと思った。

 私には貴女みたいに自由に空を飛べる翼もない。私の世界はここだけ。この家と学校と、通学路と、それが私にとって世界の全てなんだよ。


「☆」


 家を飛び出してみても、学校から逃げ出してみても、生きていけるはずなんかない。

 それにね、私は誰にも興味が持てないんだもの。何にも、誰にも、私は……。

 私はどうして……。


「☆」


 私の体が宙にふわりと浮いた。

 見慣れた街の景色が、遠い。少しずつ高度が上がっていって、ビルの屋上から遠ざかっていって、少しずつ、少しずつ、世界が遠くなっていく。


「☆」


 このまま、一緒に、世界の外側へいけたらいいのいね。そうしたら私もあなたみたいになれるかなぁ……。


「なれるわ、私とあなたなら」


 宙空に浮かぶ星々に近づいた時、耳元で微かにその囁きが聴こえた。

 そして私は、星と一緒になった。


「☆」


 一歩、踏み出したその時。私を世界から連れ出してくれる天使がいてくれたから。




「昨夜未明、✕✕ビルにて少女の落下死体が発見されました。現場には白い羽のようなものが散乱しており、事件との関連性が……」

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ごんべい @gonnbei

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