6
「ここは……」
最初に目を覚ました俺の視界に入ってきたのは、石造りの扉の無い丸い部屋。そこにポツンと一つだけ置いてあった天蓋付きのベッドに俺は寝ていた。窓から見える空は黒く、夜ということを知らせている。
「気づいた?」
声のした方を振り向くと、そこにはスイレンが立っていた。咄嗟に、ベッドから起き上がろうとしたがそれは阻まれた。見えない何か――魔法――で。
「今解いてあげるね。【解除】」
魔法をスイレンが唱えるとふわり、と体が軽くなる。それを確認したスイレンが俺をゆっくりと起こした。と、同時に、ベッドへと乗り上げてくる。
「……?」
「ふふ、恐怖に染まった顔。好きだけど、今はその顔は見たくないかな」
俺の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけてくる。
身構えた俺の顔をスイレンは通り過ぎ、額にキスを一つ落とした。
「スイ、レン」
恐怖か、はたまた別の何か、か。
俺は、スイレンの挙動一つ一つを見ていることしかができなかった。
「今は、お休み、「愛し子」」
その言葉を合図に俺は再び誘われるように眠りについた。
Breath / Birth Lidylia @Lidylia
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