5

「こ、これは……」


昨日まで、いや、つい先ほどまでは無かった新しい痣に困惑するが、今は目の前のスイレンの挙動に身構えるしかできない。

痣を見つめていたスイレンはと言うと、その痣に手をかざし、何か「呪文」を唱えていた。すると、痣にあった鎖は無くなり、青い痣は――、


「光ってる……」


それと同時に、次第に頭が痛くなり――俺は、その場で意識を失った。

……次に気が付いたのは、見知らぬ世界。




*****




俺は、その場で頭を抱えて倒れかけた「愛し子」――悠夜を抱きとめると、すぐにその場を立ち去ろうとした。……そう、したのだ。


「――おい、」


声がして振り返ると、そこには今日の主役の片割れ――新郎がいた。


「悠夜を……どこへ連れて行く気だ」


悠夜を抱えなおして、新郎のほうに向く。新郎は、顔を歪ませて怒っているようだった。


「……この子は、俺の大切な「愛し子」だ。誰にも邪魔はさせないよ」

「愛し子……まさかっ」


歪んだ顔は、すぐに驚愕の顔になった。この男は、博識なんだなと思ったので一つ警告しておくことにした。


「意味が分かるなら、この子を取り返しには来ないほうがいい。それに、君は今日結婚式を挙げたばかりの「旦那」さんだ。奥さんが悲しむと思うよ」


言葉に詰まり、その場に立ち尽くしている新郎を尻目に、俺は今度こそその場を立ち去った。

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