第二十五場 フィナーレ
●現代・魂の日の朝
リュイスたちは禁足地へ向かう。
ケミィ「……楽器ね。とても古い。でもすごく……暖かい」
リュイス、残されたギターを見て言葉もなく佇む。
しばらくして、街の人達が禁足地へとやってくる。
ロカ 「リュイス、ケミィ。二人共、遅れてすまない」
ケミィ 「みんな! その花飾りは?」
ルントゥ「ちょっとはお祭りらしくしようと思ってね」
コイユール「祭壇も、儀式も……全部なくなってしまったけれど。
きっとそのくらいから始めるのが……良いのでしょう」
ワマン、リュイスの元へ歩いてゆく。
ワマン 「これは……墓、か」
リュイス 「友達なんだ」
ワマン 「ああ……信じるさ」
ワマン、ギターとケーナを囲うよう花を手向ける。
ケミィ「ねえ、皆。私、考えたの。
暁の乙女が眠るこの場所で、祈りを伝えられたら、って。
迷ってばかりの道にも、きっと意味はあったから。
……これで良いのかなんて、わからないけど」
クラーク「やってみなさい」
ケミィ 「父さん……」
クラーク「一度決めたら曲げるつもりはないんだろう?
そんなとこが……母さんそっくりだ」
ケミィ、母たちを鎮めるために舞う。
♬魂の日 (Finale)
大人たち:
むかしむかし 御山のみもと
太陽へ祈る 『暁の乙女』
笑顔配った きらめく瞳は
ご覧 今も ここにある
男たち:
背を向けていたのは いつの日からか
失うことを 恐れるあまり
女たち:
忘れていたの 笑顔の意味を
生きてゆくため 送り出すため
『暁の乙女』たちがケミィと舞い、山へと還っていく。
乙女たち《ケミィとははおや》:
暁に 笑顔照らされ 星灯は
消えはしない 覚えているよ
祈りを込めて 送ってくれたと
リュイス:
むかしむかしの おとぎ話 海を超えた 船乗りたち
ケミィ・リュイス:
痛みを越えて その歌が ほら 今もここにある
大人たち:
途切れていた たくさんのページ
今はわかる 恐れはしない
生者たち:
歩み続ける 笑顔たずさえ
生きてるよと 送り出すため
そして今は 僕らが 受け継ぐ番さ
暁に 夜空 溶けていく この歌で 太陽迎える
消しはしない ここにある
忘れない 未来へと
気高き魂 つないだと
祭壇に、死者たちが一人ずつ現れる。
現代の空の街は、死者を祀り踊る。
リュイス:
友よ見えるか この光が 心揺らす 鳥の歌
全員:
長い間 霞んだけど 守ろう この故郷
時につまずいて 笑顔消えても この歌でまた笑う
翼広げ 選び続ける ここに散った 君の分も
貰った答えを 僕らが 明日にたくそう
暁に 夜空 溶ける頃 魂は静かに眠る
消えはしない ここにある
暖かく祈ろう
暁に 夜空 溶ける頃 魂は静かに眠る
消えはしない ここにある
暖かく祈ろう
暁に 夜空 溶ける頃 魂は静かに眠る
消えはしない ここにある
忘れない この歌を
見守り続ける 魂を
(フォルクローレ・ミュージカル『魂の日』 完)
歌劇『魂の日』 文月 遥 @leaf60055
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