第六場 空の向こう

○500年前・空の街の朝

 日が変わって、空の街の朝。ほのかな恋心を自覚するチャスカに、男の趣味が違う友人。ティッカ。そして少女たちを見守る街の暖かな風景。街の人々は腕を組み、ハンカチを振って踊り、祭りの準備を楽しむ。

 ダンスシーン(クエカ)。


♬この空の向こう側

チャスカ「ティッカ! おはよ! 今日も踊りの稽古?」

ティッカ「おはよう。ケミィったらなんだか張り切っちゃって」

チャスカ「負けず嫌いだもんねえ」

ティッカ「『代替わりしたからには、私を超えろ』だって。一年目でそんなの、無理無理」

チャスカ「あら、じゃあ今年の『暁の乙女』の座は頂きね?」

ティッカ「おこちゃまチャスカが、私より目立てるって?」

チャスカ「(自慢げに)ふふん。なんとでも言ってよ。私には優秀な演奏家がついたんだから!」

ティッカ「(興味なさげに)ふうん……」


 曲調変化とともに踊り始める町の人々。女性たちは、祭壇や飾り布の準備を始める。浮足立ったチャスカは人々の間をくるくると駆け回る。


チャスカ"新しい一日 朝が始まるの 昨日と違うの 空もお日様も

    "遠くに聞こえる 波の音が"

    "この空の向こう側 知らない世界が 知りたい この目で 見てみたい"

    "新しい歌を 奏でてみたいの"


 アマルたちが踊りながらチャスカに声を掛ける。歌にしか興味がなかったチャスカに好きな人ができたと聞き驚く街の人。アマルはチャスカの自立を祝福する。


空の街の人々"おはよう 巫女さん"

チャスカ"いいえ"

空の街の人々"村一の 歌い手さん?"

チャスカ"今は ただの観客よ 彼の歌 胸が高鳴る"

空の街の人々"あのチャスカが 恋わずらい!?"

アマル"子供じゃないのさ"

チャスカ"違う空 知らない景色 波の音が 響いてくるの"

    "私の歌 乗せてみたい 海の音に 空と海のハーモニー 奏でてみたいの"


 チャスカ、はしゃぎながら舞台からハケていく。一方、「強い男」が好きなティッカ。その基準が街最強の女戦士・ケミィで、男戦士たちはあきらめムード。戦士たちが、アントニの部屋の飾りつけを受け継ぎ、女性たちが踊り始めるパート。


アマル「張り切ってんなぁ」

ティッカ「あんな優男やさおとこのどこが良いんだか!」

戦士A「演奏がうまいんだろ?」

ティッカ「歌なんて! 男はやっぱり強くなくっちちゃ」


 戦士たち、「ほう、やはりか……」みたいなしたり顔。全然わかってない。


ティッカ"男なら 力が一番よ

戦士たち"俺たちみたいに?

ティッカ"全然ダメ! ケミィより強く 守れるくらい"

戦士たち"そりゃ無理な相談……"


 戦士たち、比較対象が最強の戦士と聞いて落胆。「そりゃどんなバケモンだ」「御山がなくなっちまう」などと軽口をたたきながら去っていく。


ティッカ"理想は高いの 会ってみたい"

ティッカ"これからは 私が踊り手よ 見ててね 次の時代"

    "踊るなら 誰よりも 強い 素敵な人 空の街 守れる戦士 出会ってみたいの"


 チャスカ再び登場。アントニの部屋の周りをうろうろとするも入れない。その様子を、街の人々は微笑ましく見ている。


チャスカ"いつもと違う こんな気持ちは 近くに居るのに 踏み出せない"

    "二人の歌 どんな音かしら 素敵な音 空と海 響くハーモニー 奏でてみたいの"


 チャスカを見守る街の人々。新しい出会いを歓迎し、新しい未来に期待をはせる。


空の街の人々"違う国 空の向こう あの子には どう見えてるの"

      "歌だけを 学んでいた あの子 空と海 新たな出会い きっと 良い知らせ!"


 ダンスパートの〆ポーズ。視点は変わって、アントニが楽器を弾いている住居。街の人が去るのと同時に、ケミィが入室。

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