『if』

犬養

『if』

「ねぇ、もし俺が俺じゃなかったらどうする?」


「はぁ?」

「いやだからさ、お前が俺だと思ってる俺が偽物だったらどうするのかな~って。」

「はぁ...」


また始まった。こいつのif。

もしも、たとえば、だとすると。

どいつもこいつもifの話ばかり。

俺はな、もしもの話が大嫌いなんだよ。


「ねぇ、どうするの?」

「...お前ほんとにそういうの好きな。」

「だって想像するのって楽しいじゃん?」


またお前はそうやってありもしない未来に目を向ける。

俺の方には目もくれないで。


俺がお前の隣に、お前が俺の隣にいて、言葉を交わし合える。そんな今だけで俺は十分なのに。


「...お前はお前だからいいんだよ。」

「ふふ、なにそれ答えになってないじゃん。」


ifなんてくそくらえ。

俺は俺で、お前はお前。

それだけは変わらない事実なんだから。




まぁ、来世ってもんがもしもあるなら、またお前の隣を歩いてやってもいいかな。

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『if』 犬養 @ikasaki721

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