人間ごっこ

酢烏

人間ごっこ


 目が覚めた時、僕の右足は、すでに合金製のそれに取って代わられていた。

 病室に差し込む日光を、重厚な色彩を以って反射するそれは、元からそこに存在していたように――むしろこの方が自然であったかのように、生々しく蠢いていた。

 僕は右の義足に、膝を曲げながら、かつ足首が捻じれないよう、脳波を送った。神経系を介して受信したらしき棒状の鉄の塊は、嫌味たらしく僕の指示通りに動いてみせた。

「成功だよ。これで、君もまた自由に歩けるようになる」

 看護師が微笑む横で、僕の担当医が穏やかに語りかけてきた。何か返答しなければ、とは思ったが、口は他の顔面パーツと一緒になって静止していなければ気が済まないようだった。仕方なく、僕はその状態を維持する。

 痺れを切らしたようで、医師がため息混じりに続けた。

「どうした、あまり嬉しそうじゃないな……君の足が、また動くようになったんだ。もう一度、好きなように歩き回れるようになったんだ。喜ばしいことじゃないか、なあ」

 同意をなぜか看護婦に求めた医師の横顔を、僕は嘲るような目つきで眺めていた。もちろん、彼らには気付かれることのないよう、非常に短い間だけ。

 確かに、僕の足は機械によって再生した。鉛やら鉄やらがごちゃごちゃになってできている、このひたすらに重苦しい見た目の義足が、僕の生まれついての足に置き換えられることによって、僕は歩く権利を取り戻したのだ。

 感謝はしていた。それはもう、心から、表現できないほどに。

 けれど、今の僕にあるのは喜び以上のもの――いや正確には、喜びとは一見無関係の、しかし見えないところで一体化している感情だった。

 それを月並みの言葉で表現するのはひどく難しいのだが……あえて言うなら、「気持ち悪い」だった。

 歓喜とは裏腹に、胸の奥底から湧き上がってくる、後味の悪い塊。他人の親切を踏みにじるような、非常に不愉快などろどろ。

 それを僕たちは普段何と呼んでいるのだろう。もしかしたら歴史上、誰も名付けたことのない情動なのかもしれない。それとも、感知されたこともないものだったのだろうか。

 ……それだけは絶対にありえない、と僕は思う。現に、この時、この場所にいるこんな僕ごときが、実際に胸中に押し込めているのだから。

 そんな「気持ち悪い」心の騒めきに、僕の脳みそはもう耐えきれなくなっていた。

 ふと、自分の右足のあった場所を見やる。細長い鉄塊が、相変わらず鈍色の光を放っている。

 これは僕の身体じゃない、と断言できた。

 そして、決して生々しい、生きた人間の身体に取り付けてはならないものだ、とも。

 僕の脳波を感知してその通りに動くようプログラムされた、単なる機械でしかないはずなのに。

 それがまるで、僕を侮っているかのように見えてたまらないのだ。

 ひたすら煩わしいのだ。

 それが僕の「気持ち悪い」に繋がり、やがて心を掻き乱し、意図せぬ方向に脳をいじっていくことになるなど……言い方は悪いが、最大最悪の恥辱だった。

 こんなことになるなら、両親に背いてでも、歩行の権利を失ってでも、手術を拒むべきだった。あの時決断できなかった自分が、情けなかった。



 やがて、夜がやって来た。医師も看護師も、隣のベッドの患者もいなくなり、完全な静寂だけが、月光を交えて窓際の僕に寄り添ってくれた。

 少し安らぎを覚えながら、ふと右脚部を見つめる。白い光を散漫に照り返しながら、合金製の物体が注意深くこちらを覗き込んでいた。

 ……こんなのは、僕じゃない。

 何度も繰り替えした感想。ただ、この夜に関しては、僕の心は異様に火照っていた。どこかで発散してやらなければ、きっと自身の熱で暴発してしまう。

 そういった認識も相まって、義足をまとった僕は、ついに行動を起こすことにした。

 静かにベッドの上に立ち、窓ガラスに映った自分の像を破壊する寸前、僕の視界に一筋の煌めきが入った。おそらくは月光――太陽が発した光を単に月が反射したにすぎない、虚ろな光が、目の粗いカーテンを通ってきた結果だ。

 構わず、僕は自分の像を、取り換えられた銀色の右足で蹴とばした。と同時に、飛び散る破片を避けながら、眼下に広がる大地に飛び降りる。

 数秒間、重力の意のままになりながら、僕はその小さな体躯を操作して両足の位置を整える。

 そのおかげで、着地は無事、成功した。少し衝撃は走ったものの、これから走る分に支障はなさそうだった。

 逃走を開始する際、さっきまで押し込められていた病室を見上げる。頭上の留置場の窓は、支柱が緩くなった案山子のように、空中で力なく踊っていた。

 その背景にちょうど重なって、白いカーテンが激しく揺れ動いている。まるで、僕に向かって歓送の儀を執り行っているように。



 病院を抜け出した僕は、ひたすら走り続けた。目的地はもちろん、自分の家だ。手術を強要した愛すべき両親が待つ、この世に一つだけの家に。

 よく知らない夜道を駆け走るのはなんだか心細かったが、それでもあの監獄に閉じ込められているよりは数段良かった。

 人間に機械を移植する、異色の行為を平気で行うあの医師たちの不気味な笑顔に囲まれて生きるなんて、腹を裂かれても御免だった。慣れない義足のせいで転ぶ度、僕は彼らのことを思い出して自分を奮い立たせた。

 やがて見慣れた商店街の光景が近付いてきた。安堵の表情を浮かべながら、自宅までの最短距離を全速力で駆けてゆく。

 両親は、まだ起きているのだろうか。いや、そんなことはどうでもいい。あの人たちのことだ、僕が自力で帰ってきたと知ったら、きっと両腕を広げて「おかえり」と言ってくれるだろう。

 心配すべきことなど、何もなかった。だから僕はほぼ無心で、漆黒に近い裏道を突き抜けることができたのだ。

 けれど、それが自分の理想でしかなかったことを知ったのは、皮肉にも実家に辿り着いた時であった。

 玄関に備えられた段差に昇り、少々緊張した面持ちでドアベルを鳴らす。自分の家だというのに、他人行儀に徹しなければならないのがもどかしい。僕は、早く両親に会いたいのだ。たとえ病院送りにしたのが彼らだったとしても、それでも二人の腕に優しく抱かれたかったのだ。

 インターフォンが閑静な住宅街に鳴り響いて数秒後、オレンジ色の灯りの点灯とともに、眠そうな母の声が聞こえた。

「……こんな遅くに、どちらさまですか?」

 滲み出ている怒りの色には一切気付くことなく、僕は必死に自分の名を叫んだ。

「――! 僕だよ、母さん、僕!」

「……どちらさま、でしょうか?」

 出てくる寸前で立ち止まった影は、一向に橙のライトのもやを離れようとしない。むしろ警戒して、委縮してしまっているようにも見える。僕は改めて自分の名を呼んだ。

「だから、――だって! ねえ母さん、聞いているの?」

 返答はなかったが、彼女の影がため息をついたのは分かった。そして諦めてくれたのか、重い鍵を開け、母親は顔だけをオレンジの霧から浮かび上がらせてくれた。

「……なあんだ、――か」

 その声に、予想していた歓喜の調べは感じられなかった。むしろぱりぱりに乾燥しきっていて、迂闊に触れてしまえばすぐに破れてしまう繊細な枯れ葉のような言い回しだった。

「こんな遅くに何やっているんだか……いいから、早くベッドで寝なさい」

 そう言いながらも、母は戸口を狭め、僕との関係性を遮断しようとしていた。咄嗟に手を伸ばし、彼女の行為を鎮める。

「ねえ母さん、僕、手術が終わったんだよ。これでもう、歩けないからって母さんたちを困らせることはないんだよ」

「……あっそう」

 彼女の眼差しは、冷たかった。彼女が今目にしているのは僕ではなく死人なのかと、後背を窺ったりもした。

 けれどそれは間違いなく、僕に向かって放たれたものだった。

「いいから、とっとと病院に帰って、ベッドで寝てなさい。話すのはそれから」

 相変わらず薄っぺらい木の葉のような語り口で、母親は力任せに僕の腕を引き離した。そのまま、重苦しい塗装のドアを閉め切ろうとする。

 その瞬間、僕の中で、何かが弾け飛んだ。

 いや、そんな感覚は後付けだったのかもしれない。

 いずれにせよ、それから数分間の僕の記憶は、完全に抜け落ちていた。



 気付いた時にはもう戦いは終わっていて、動かなくなった母の肉体だけが静かに風に煽られていた。

 騒ぎを聞きつけた父の肉体も、同じように玄関先に倒れている。ただこちらは、すでに庭の土壌に顔を突っ込んでいるから、その表情を窺い知ることはできなかった。

 二人は、安らかだった。それでいて、非常に力ない存在だった。長年慕ってきた僕の憧れを、ことごとく否定するように。三人の間に結ばれていたものは所詮形だけのものであった、と証明しながら。

 けれども、彼らの死体で一番注目すべきだったのは、その「中身」であった。

 屍になった彼らの肉体。特に母親の方は首が捻じ曲がったせいで、生物にしてはあらぬ方向を向いた頭部に、悪寒ではなく見栄えの悪さを感じるほどだった。

 その捻られた首筋にかけて、皮膚が横に大きく断裂した箇所がある。ちょっと力を加えれば乖離してしまいかねないその裂傷部に、血や細胞の類が散らばっている様子は一切見られなかった。

 飛び出ていたのは生体部品ではなく、むしろ人工的なもの。つまりICチップや回線、コイルといった、ロボット小説に出てきそうな単語の全集合であった。

 流れているものも、大量の真っ赤な血液ではなく、くすんだ黄土色をした潤滑油だった。それも、ごく少量。こんなところまで、この女性は一体どれだけケチなんだろう、と僕は思った。

 父親も同じだった。くびれた腹の裂け目からは、おそらく母のそれをも構成しているのであろう数々の電子機器類が、見事なくらいでたらめに収められていた。そちらはもう、吐き気を催すくらいに汚いものだった。

 僕は父の死骸の方に近付き、のっそりと伸ばされている右足を掴み上げ、とりあえず引き抜いてみた。寝起き直後だったせいで人工筋組織も硬直していたのだろうか、脚部は簡単にボディから引き離すことができた。

 すかさず断面を眺め入る。予想通り、大小さまざまな部品が、無数の配線が絡まり合う中で交互に点滅していた。

 僕はこれで、ようやく確信に至る。


 そうだったのか……僕は、彼らの子ではなかった。

 彼らは、元々か事後かは分からないが、機械だった。

 僕ら人間とは、根本的に違ったのだ。

 そう思うと、母の最期の言葉も妙に納得することができた。僕に首を絞められる中、息交じりに放った、あの言葉。

「お前も、……」

 そうだ。僕は人間だ。

 彼ら「人間ごっこ」をしているロボットとは二倍も三倍も違う、命の尊い価値を持った、格の違う存在なのだ。

 だから、お前たちを壊しても、何の問題もない。

 母はとっくに、気付いていたのだ。



 警察が来る前に街に逃れた僕は、そこでも無数の「人間ごっこ」を見た。

 深夜帯に営業するバーの主人と客、引ったくりの為に酔っぱらいを待ち伏せする屈強な男、裏通りでひっそりとゴミを漁って腹を満たすホームレス……どれもこれも、ロボットだった。一体ずつ実際に解体してみたから、分かる。

 この街は……いや、すでにこの世界は、ロボットに支配されているのだ。無意味な「人間ごっこ」に時間を費やす、見た目だけ着飾った量産可能なロボットどもに。

 それを知った時の絶望といったら、何とも表現しがたい。ただひたすらに広い草原の上で、自分以外はすべからく野蛮な動物で、そこで強制的に人生を過ごさなければならないと定められたら、きっと同じ感情を抱くのだろう。それくらい、僕の意識は捉えがたい事象を認識していて、それでいてどこか安定していた。

 帰るべき場所も、留まるべき世界もない。そんな僕にできたことは、ただ一つだけ――。

 ロボットどもを殺して、自分の命を食い繋ぐことだった。


 僕のロボット狩りは、食料調達には一見役立たなそうだが、実際には彼らの携帯している人間用のジャンク・フードや菓子類、時には弁当や食材を外装ごと奪い取ることで、どうにか必要な栄養分を摂取することができた。それに、捕らえたロボット内部の部品を一切廃棄し、着ぐるみのごとくこしらえることで、買い物にも出られるようになる。月に一度のペースではあったが、生活必需品も一通り揃えられたのは僥倖だった。

 最初の内は獲物を捕らえるのにさえも苦戦したが、次第に彼らを効率的に捌く方法や典型的な行動パターンが読めてくるようになると、僕の「狩り」は慣れの効果もあって順調になっていった。当初は二、三日に一体といった具合だったが、一ヶ月も経つと一日に三、四体捕るのはザラで、むしろ捕獲できない日の方が珍しいくらいになった。「狩り」の技術は、まさに神業の域に達していた。

 そうなると、ロボット狩りにも段々悪ふざけの意が生じてきて、一種通り魔まがいの「狩り」まで行うようになった。簡単に説明すると、手に入れたロボットを一旦拘束し、意識のあることを確認してから、彼らの腕や足を一本一本抜いてゆくのだ。そして完全に息絶えた後、「お返し」として内蔵機関をぐちゃぐちゃにし、必要に応じてえぐり取る。そうして出来上がった死体を比較的目立つ場所に放置してから、証拠を残さず僕だけが立ち去る。

 この一連の残虐行為には、何か麻薬のような中毒性が含まれていた。享楽として行うだけの無意味な破壊ではあったが、倫理的な悪の自覚や自制はまったく受け付けなかったし、芽生えもしなかった。僕の精神が壊れ始めた証拠でもあったし、またロボット社会に対するささやかな反乱行為でもあった。

 いずれにせよ、僕がただの「狩り」では飽き足らず「切り裂きジャック」まがいの殺戮に手を染めたのは事実だったし、だからといってそれを咎める者も、必要性もなかった。

 結局、この世界に本当の人間は僕だけなのだ……他は全て、「人間ごっこ」をしている機械生命体に過ぎない。だから壊していい。



 街の外にも僕の通り名「第二の切り裂きジャック」が広まっていったところで、ついに僕自身の身体にも不調が見られるようになった。

 具体的に言うと、右足を除く四肢が思うように動かなくなってきたのだ。「狩り」の継続で蓄積されていった傷の影響でもあるだろうし、単純に過剰な負荷を掛け続けた結果でもあった。

 いずれにせよ、このままでは僕の身が危ない。この窮地を乗り越えるため、僕は一つ、大きな壁を乗り越える決断をしなければなかった。

 その第一弾を行う前夜、僕は自分の右足を見つめていた。あの全ての始まりだった日に、僕の身体に取り付けられた、合金製の物体。これから全身がこいつと同じになると考えると、怖かった。

 つまるところ、僕も「人間ごっこ」の一員になってしまいそうだったからだ。

 それでも生きるためだ……自分に言い聞かせて、僕はまた、黒い感情の塊を胸の奥にため込んだ。



 「狩り」自体は成功だった。狙っていた獲物は予想通りスーパー脇の路地に迷い込んだし、僕は奴を背後から襲って殺し、その左腕だけを綺麗に抜き取った。問題らしい問題点は、まったくなかった。

 だから、奴らの警察機構に尾行されていたことにも、まったく気が付かなかったのだ。

 半ば居住地化したいつもの裏路地に舞い戻り、気を緩めた僕は一瞬の内に、背後からいくつもの銃弾を浴びることになる。

 力なく倒れる身体。痺れるような、熱いような痛み……しかし不思議なことに、僕が死ぬことはなかった。

「やっと尻尾を掴ませてくれたか、『第二の切り裂きジャック』」

 警官部隊のリーダーらしきロボットが、僕の身体を踏みにじりながら語りかけてくる。すかさず反撃する僕。

「……話しかけるな、『人間ごっこ』をしているロボットども」


 その言葉に、彼らは一瞬きょとんとした。そして一斉に、どっと笑い出す。

「何を言っているんだ、異分子君。かつては君だって、そのロボットの一員だったじゃないか」

 リーダーは、さも当然のことであるかのように告げた。それでも首を縦に振らない僕を見て、半ば呆れたように説明をする。

「いいかい。西暦二〇四八年……君が生まれたちょうど百年前には、すでに人類は滅んでいたんだよ。代わりに地球の支配者として君臨したのは、我々ロボット――正確には、機械生命体だ」

 その事実に対しては、僕は首を振った。僕の知識習得具合を、警察部隊は決して意に介しなかったが。

「人類が自ら引き起こした核戦争のおかげで、この星の環境は激変した。肉体を持った生命はすべからく死に絶え、残った我々はエネルギー補給のために、新たな人工化合物を生み出した……それが彼らの食料を模しているのは、流石に趣味の域だと思うがね」

 リーダーの口は、せわしなく動いていた。

「そう。君が今まで口にしてきたものは、すべて機械のためにつくられた人工物だったのだ。他の物体もすべて一緒。この世界はすでに、すべてが我々ロボットのために作られている……それなのに、君のように自身を『人間』をだと錯覚する奴は後を絶たなくてね。そういった異端児を処分するのが、我々秘密秩序維持部隊の役割なのだよ……」



 その後のことは、あまり覚えていない。ただ彼らと激しくやり合ったこと、リーダーを殺せたおかげで何とか離脱に成功したこと、それでももう復旧不可能なほどに痛めつけられてしまったこと……つまり、僕が絶望的な死に向かっていることは、何となく把握できていた。

 ……僕が、ロボット?

 とてもじゃないが、信じられなかった。と同時に、信じたくもあった。

 孤独と英雄譚。どちらも魅力的な要素ではあったけれど、今の僕にはその両方が無意味であった。その代わりに求めていたのは、愛……という感情、だったのだと思う。

 全身を襲う痛みに、思わず僕は建物の壁にもたれかかった。そしてそのまま、動けなくなる。

 ……死ぬ、のかな。

 一種、感慨深いものがあった。今まで無理して押し込めてきたものが、一気に解放された気分。悪いものではなかった。

 ふと、自分の右足を見つめる。長年忌み嫌ってきた、この銀の義足。

 ごめんね、と今更ながら声を掛けた。同時に、僕の意識も朦朧としてくる。

 最期の最期にやっておきたいことを思い付いた僕は、残った力を振り絞って、自分の胸を掴んだ。そして強く、頑固な金庫をこじ開けるように引っ張る。

 がこん、と鈍い音がして、胸の板が外れた。内部から漏れる白色の光は激しく点滅していて、今にも消えそうなほど弱々しかった。

 その中で一番大きな光を放っている部品を、僕は手探りをして握りしめた。発熱しているらしく、少し温かい。

 一呼吸考える時間を置いてから、僕は思い切り、その部品を引き抜いた。

 これまで、多くの同胞に行ってきたように。

 そして、これまでたまってきた黒い塊を、一気に抜き取るように。



 僕の「人間ごっこ」は、これで、おしまい。

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人間ごっこ 酢烏 @vinecrow

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