第13話『いざゆけ金髪少女』
まさかの会長さんの登場。まさか、会長さんも植物園に来ていたなんて。あと、私服姿の会長さんもとても綺麗だなぁ。
「こんにちは、会長さん」
「こ、こんにちは。百合ちゃん」
「まさか、こんなところで会長さんと会えるなんて。会長さんも植物園に遊びに来ていたんですね。素敵な植物がたくさんありましたよね!」
「そ、そだね……」
視線をちらつかせて作り笑いを見せる会長さん。そんな彼女とは対照的に、綾奈先輩はクスクスと笑っている。
「百合は素直だね。ちなみに、愛花には昨日、駅近くでショッピングしようって誘われたときに、百合とデートすることを伝えているよ」
「そうなんですか。私も昨日、部活に遅れちゃってその理由を説明する流れで、部活の先輩方に言いました。あとは美琴ちゃん達クラスの友達にも。土日はたまに遊ぶことがあるので……」
「そうなんだ。今日のことを伝えたからかもしれないけど、愛花……私達の後をついてきていたんだよ」
「えええっ!」
私、全然気付かなかった。駅とか電車の中も、多くの人から視線を浴びているなとは思っていたけど。それに、綾奈先輩と会ってからは彼女のことばかり見ていたし。
ということは、百合の花の前で綾奈先輩に告白しようと思ったけど、結局できなかったところも会長さんに見られていたんだ。ううっ、恥ずかしい。
「綾奈先輩、いつから会長さんのことを気付いていたんですか?」
「百合と会う前から、どこかから視線を感じてた。そのときから愛花かもしれないとは思っていたよ。電車の中で百合が周りから見られているって話になったじゃない。それで周りを確認したときにハーフアップの金髪の女の子がいたから、やっぱり愛花だったんだって」
「あのときにはもう気付かれていたのね……」
会長さん、げんなりとした様子だ。
そういえば、電車の中の様子を見た後、色々な人が見ているねって言っていたっけ。そのときに会長さんがいるのを知ったのか。
「でも、どうして今まで気付かないふりをしていたんですか?」
「だって、これは百合と私のデートじゃない。百合が気付かない限りは、私と2人の時間を楽しんでほしかったんだ。せめても植物園のときだけでも」
「そうだったんですか。じゃあ、お昼ご飯は2人がいいか、3人がいいかって言ったのも……」
「うん。近くのパスタ屋さんでお昼を食べるのも昨日のうちに決めたことだから。でも、百合は普段、何人もの友達と一緒にお昼を食べるって前に話していたから、面識のある愛花と一緒ならいいかもしれないと思って」
それで、ああいう風に問いかけたたってことね。正直、綾奈先輩と2人きりでお昼ご飯を食べてみたい気持ちもあるけど、それだとドキドキしてまともに食べられないかもしれないし。それに、会長さんが一緒なら、綾奈先輩のことをより知ることができるかもしれないから。
「ごめんなさい、綾奈、百合ちゃん。昨日の夜、綾奈から百合ちゃんとデートするって聞いたとき、こういうのは初めてだから心配になっちゃって。例の体質のこともあるし」
「……そっか。あの体質が分かってから休日に一緒に出かけるのは、家族以外だと愛花くらいだもんね」
「うん。一昨日の放課後に百合ちゃんの家に行ったって話は聞いたけれど、2人のことが気になって後をついてきちゃった。2人とも、ごめんなさい」
「気にしないでください、会長さん。体質のことを含めて、綾奈先輩のことは色々と聞いていますから、会長さんの話すことも分かりますし。先輩と2人きりで植物園デートできましたから」
恥ずかしく想うことも何度かあったけど、それも思い出ということで。会長さんと会ったからより印象深い初デートになりそう。
「百合がこう言っているし私もいいよ。ところで、愛花。これからこの近くにあるパスタ屋さんでお昼ご飯を食べようと思っているんだけど、一緒に行く?」
「……うん!」
会長さん、とても嬉しそうな顔をしてそう言った。その可愛らしい笑みにキュンとなって。何度も告白されたことがあるのも納得した。
私達は綾奈先輩の調べたパスタ屋さんへと向かう。そこは植物園から徒歩数分ほどのところにあるオシャレな雰囲気のお店。中には私達のような女性客達や、20代くらいのカップルらしき人達がいるくらいで、特に混雑はしておらず落ち着いた雰囲気だ。
私は綾奈先輩と隣同士で座り、テーブルを挟んで私の正面に会長さんが座った。
メニューが豊富で迷ったけど、明太子パスタにした。ちなみに、綾奈先輩は蟹のトマトクリームパスタ、会長さんはカルボナーラを注文して、あとで一口交換し合うことに決めた。
「結構落ち着いた雰囲気のお店なのね」
「そうだね。パスタがとても美味しいみたいで、植物園帰りにオススメって書いてあったからここにしたんだ」
パスタを食べている周りのお客さんの反応を見る限り、そのパスタも結構期待できそうだ。あと、サキュバス体質の影響か、女性のお客さんや店員さんがこっちを見ている。
「それにしても、百合ちゃんとデートするとは聞いていたけれど、まさかその行き先が植物園だとは思わなかったよ」
「百合が園芸部だからね。植物に興味があるだろうと思って多摩植物園を提案したら、百合も夏休みになったら行きたいって思っていたらしくてね」
「はい。東京にも意外と植物園がたくさんあって。多摩植物園が花宮から一番近くて大きい植物園でしたから、夏休みに行きたいなって思っていたんです」
「そういうことね。思い返せば、特に百合ちゃんは植物園の中を楽しそうに歩いていたな。特に百合の花の前で大きな声で好きだって言ったときは、驚いちゃって声を抑えるのに必死だったよ」
「私も驚いた。本当に百合の花が好きなんだなって思った。百合だけに」
「ああ、そういうこと……」
会長さんは声に出して笑っている。ただ、ツボにハマったらしくその笑いが止まらない。笑いの種が芽吹き、花が咲いてしまったようだ。
「ここまで笑い続ける愛花を見るのは久しぶりだよ」
「そうなんですか。でも、こんなに笑われると何だか恥ずかしくなってきますね」
あのときに百合の花が好きだと言ったのは、綾奈先輩へ告白しよう思ったのに結局できなかったからだし。
「ごめんごめん。何だか面白くて」
そう言うと、会長さんはコップいっぱいの水を飲む。そのおかげか会長さんの笑い声が止まった。
「そろそろ話題を変えようか。そうね……そうだ。一昨日の放課後にあなたの家に来たときに、綾奈に何か変なことをされなかった? 家に行ったことと、例の体質のこと話したことしか聞いていなくて」
「えっ? そ、そうですね……」
綾奈先輩に太ももを触られて、ベッドに倒れた私のことを艶やかでそそられると言われたことを思い出してしまう。ううっ、体が熱くなってきたよ。
「……何かあったのね、百合ちゃん」
「ええ。その……会長さんはご存知だと思いますけど、綾奈先輩は太ももフェチで私の太ももをたくさん触ってきました」
「……そんなことだろうと思った。綾奈の太ももフェチは相当だから、私の太ももを時々触ってくるの。あの体質のせいなのかって思うくらい」
どうやら、綾奈先輩の太ももフェチはかなりのものみたいだ。
「百合の太もものこと、まだ話してなかったか。百合の太ももは相当私好みだよ。白くて綺麗だし、触ると柔らかいし。今のところ、愛花と百合のツートップだね」
太ももについてここまで力説する女子高生はそうそういないんじゃないだろうか。
「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるわね。ただ、太ももを触れて嫌だと思ったら遠慮なく言っていいんだよ、百合ちゃん」
「分かりました。でも、この前はとても丁寧に優しく触っていたので、くすぐったかったですけど、嫌だとは思いませんでした」
「……百合ちゃんが寛容な女の子で良かったね、綾奈。太もも好きなことを否定する気は全くないけど、学校でも生徒の太ももをチラチラ見るから、あなたに好意を抱く生徒がより多くなるんじゃないかって思っているくらいだよ」
「そうかなぁ。でも、好きなものって見たくならない? それに、太ももを触るのは愛花と百合くらいだって」
爽やかな笑みでそう言われると厭らしさを全く感じないな。むしろ、触られるほどの太ももだったんだと嬉しく思えるくらいで。
「お待たせしました。明太子パスタとカルボナーラ、蟹のトマトクリームパスタです」
それぞれが頼んだパスタがテーブルの上に置かれる。その際、店員さんが綾奈先輩に対して凄くいい笑みを浮かべていた。それに対して綾奈先輩がにっこりと笑って、こくりと頷いていたのがとてもかっこよかった。
綾奈先輩も会長さんも自分の頼んだパスタをスマホで撮っている。私も思い出に残すということで写真を撮っておこうかな。
「じゃあ、いただこうか。百合、愛花」
「そうですね」
「そうね。いただきます!」
明太子パスタを一口食べてみると、
「うん、美味しいです!」
「こっちも美味しいよ。蟹とトマトクリームって合うんだなぁ」
「カルボナーラはクリーミーでとても美味しい」
「2人が絶賛していると食べたくなってくるよ。さっそく一口交換しよう」
約束通り、先輩方とパスタを一口交換することに。蟹のトマトクリームパスタもカルボナーラも凄く美味しくて。オススメのお店として紹介されているのも納得だ。綾奈先輩も会長さんも満足している様子。
楽しい話もできたし、会長さんと3人でお昼ご飯を食べて正解だった。ただ、近いうちに綾奈先輩と2人きりで食事を楽しめればいいなと思うのであった。
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