第二章

幕間1

聞こえる。

声が、様々な声が聞こえる。

罵詈雑言、厭世感、文句に苦情、色んな負の感情が読書でもするみたいに解る。

この1ヶ月で急激に悪化した視力を補う様にかけた眼鏡は慣れないせいか着け心地があまり良くなくて、鼻の辺りがむず痒くて仕方なかった。


同級生である不来江こずえみなとの実家の電器店を曲がり、路地裏に入るとそこには探偵事務所が────。


「……あれ、ない?」


そこに探偵事務所は無かった。

忘れられ、苔むした無縁仏と思われる墓標が一つあるのみだったのである。




新澤は、螭子は、探偵はどこへ消えたのか。

焦って走り出した所に、運が良いのか悪いのか湊が現れた。


「……あれ、あんた────」

「丁度良かった!探偵事務所がどこに消えたか知らない?!」

「何の事?」


一瞬頭が真っ白になる。


「てか……誰よ、あんた」


焦りのすみ、不安の火をともした心という紙が、ジワジワ蝕まれていく。


「衣繍結夢、だけど……」

「────何、怖いんだけど」


明らかに不審者を見る目。

結夢はこの街で、にされていたのだった。

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探偵は化け猫さん 笹師匠 @snkudn

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