図書館暮らし。

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

図書館が開くまで10分

 ほんの二、三年前の、二月、真冬のこと。

 仕事が休みだったので、図書館へ。


 図書館に早く着きすぎて、館の前にあるベンチに腰掛けてKindleを読んでいた。


 顔を見上げると、急に人が増えてきた。

 集まってきたのがお年寄り集団なら、まだ分かる。

 時間を持て余しているのだろうな、と。


 しかし、どうも妙な一団が混じっている。

 みながみな、肉体労働者風で、服の汚れなどが目立つ。お世辞にも、清潔な人々とは言えなかった。

 カタギのお仕事じゃないな、と一発で分かる。

 本に興味がなさそうな一団だな、と。


 決めつけはよくないが、そういう類いの人かなと思った。


 館が開き、彼らは我先にと、図書館へ入っていった。

 

 ただ、求めるのは新聞などである。

 誰も、本を手に取ろうとはしない。

 ベンチに座り込んで、早速眠りこける人も。


 老夫婦など、ちゃんと本を借りている人はいたが、一部はやはりベンチ目当てのよう。


 オレは、本を借りていかない人達を見て、

「ああ、暖を取りに来ているだけだな」

 と思った。


 もし、オレが思っている通りの人達なら、なるほどと思わせる。

 カフェや公民館だと金取られる。

 公園は寒い。

 だったらここだよね、と。


 昔、とある作家さんが、

「六〇〇円で一日中映画館にたむろできた時代があって、ホームレスが一番映画に詳しかった。『あの映画は三作目からはダメ』とか語ってるんだ」

 と、ラジオで語っていらした。

 

 なので、図書館でも同様の現象が起きているのではないかと。

 全然、本を読んでる風ではなかったけど。


 この手法、わりとメジャーなのだろうか?

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