私の死
そこまで書くと、私は一息ため息をついた。
金村が死んでから、慌ただしい一週間が過ぎ、今私は家族と過ごした家にいる。
部屋には私と、死んでいった者達の死に様を書いたノートと、遺産相続用の書類しかない。
机に置かれたそれらを見て、私の自殺家族の人生を振り返った。
彼らは社会によって不幸をもたらされ、社会によって虐げられ、社会によって殺されかけた、社会の犠牲者だ。
だが彼らは強い信念で、社会の犠牲者として生きるのではなく、愛する者のための殉教者として死んでいった。
父の愛情、兄の優しさ、母の思いやり、そして金村の贖罪と純愛。
彼らは、社会の悪によって染められた人生に、死ぬことによって革命をもたらした。
彼らは強かった。
社会の中で、ただ操り人形となり、歯車となり、機械となり、何も考えずに生きている弱き人間とは違う。
彼らは、その意志の強さで革命を起こした、偉大で尊敬すべき革命家なのだ。
だが、そのことを知るのは私だけ。
そして、革命の側で、何とかしようと、革命を起こそうとした強い私ももう消える。
社会の傀儡となる条件は、目の前に広がっている。
書類を書き終われば、金村として生きるための、お金だけが入ってくるのだ。
私は一度、家族と過ごした家を見まわした。
そして、一息ため息をついて、書類に判を押した。
この日、強く、逞しく、尊ぶべき革命家の私は死んだのです。
自殺家族 nogino @nogino
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます