【推論】『線維筋痛症について』
千菅ちづる
線維筋痛症についてのアブダクション(大学提出用レポート形式)
もし、私が現代、原因不明の病と闘う妻を持つ、一人の夫であったなら
テーマ理由および意義
現在においても原因不明とされている病は未だ少なからずある。しかしそれと闘う人、またはいずれ闘う可能性のある人は相当数居る。原因不明の病と闘う患者の苦悩を自分に置き換えるなど、おこがましいと思われて当然である。しかし、このテーマ、生理学者にとっては、現代難題とも呼べるもののはずである。国際問題の体験を想像し綴ることも大切である。だが、このテーマで想像し、まさにこのような人物の立場になりきり、調べ、考えることで、少しでも誰かの見識を広げられればと思いこれを紡いだ。また願わくば、この見識が誰かの闘いに貢献できればと思いながら、このテーマでレポートを綴った。
原因不明の病には、線維筋痛症という病がある。これは数々の説はあれど、未だ対処的措置しかとることができない病である。私の妻にもこれと同じ症状が見受けられる。そして私の妻は、社交不安障害と慢性疲労症候群とも闘っている。線維筋痛症によくみられる、関節を主とした全身に渡る疼痛や記憶力の低下。激しい疲労から起きる心因性発熱。社交不安から起きるパニック症状。他にも、喉の奥の痒みを訴えている。
線維筋痛症は、個人差はあれど全身に疼痛が起こる病とされているが、向精神薬が投与されるなど、内外科というよりも、精神科の部類に入る病気である。
妻の場合、精神由来であるものが非常に顕著であり、慢性疲労症候群と社交不安障害を併発していることも、線維筋痛症を解明していく上で、必要となってくるだろう。
調べてみると、線維筋痛症は圧痛点が18ヵ所あるらしく、この圧痛点が疼痛を解明するためのヒントになるのではないかと考える。
自分自身の疼痛の経験は、扉に指を挟み、指が鬱血した際の痛みしか知らない。あのときは、脈と痛みが呼応して起きていた。
ゆえにこの感覚と高校時代の生物基礎の知識からしか推測はできないが、夫としてはそれでも尽くしたい。
まず箇所として、臀部の4半上外側部に2ヵ所の圧痛点がある。私はまず始めに腎臓の毛細血管の高血圧による疼痛を疑った。しかし、血圧というものは、血流と血管の太さによるものであるため、血中濃度が低ければ、血圧は下がる。ゆえにもし血中濃度が低くなる症状、またはそれに間接的に作用する症状があれば、血圧からの疼痛は発生し得ないと考えた。
妻は痩せ型であり、タンパク質が十分に身体に補給されているとは考えにくい。
そして私はパニック症状について調べるなかで、『パニック症状が出ている際、海馬をはじめとした脳内器官がグルコースを過剰消費する』という記述を発見した。
臀部の4半上外側部というのは、腎臓と膀胱に比較的近く、腎臓と膀胱の間には輸尿管と呼ばれる管が伸びている。
もしも、腎臓のボーマンのうでの過剰なろ過と細尿管の不全が起きるならば、グルコースやタンパク質を含んだままの濃度が高い尿が輸尿管を通ることになる。すると、輸尿管の許容量を超えた尿は輸尿管に圧を与えるのではないだろうか。ゆえに、圧痛点としてその場所が現れるのではないか。
もしこの推論が正しければ、グルコースが十分に吸収されないために、海馬での過剰消費にも対応することができず、記憶障害や思考力の低下を引き起こすと予想することも可能だ。
更に、妻が痩せ型であることにもタンパク質の吸収不足によるものであると納得できる。
ならば、これも対処的ではあるが、糖分やタンパク質を含んだものを食事にふんだんに盛り込もう。
しかし、まだ謎はある。
圧痛点は他にも多数あり、特に関節付近の圧痛点が多い。関節というものは、筋肉の収縮・拡張に対応する場所である。タンパク質が少ない状態で伸び縮みする筋肉は、極端に言えば線維のみで伸び縮みしているようなものではないか。そこで関節付近が痛むということは、線維の伸び縮みで起きる大きな負荷が関節にかかってしまっている可能性が極めて高い。関節付近にも骨はあり、むしろその骨は他の箇所より丈夫にできている。骨には、骨膜があり、そこには痛点も存在している。もしも、骨密度が低くなる要因がある場合、骨膜への刺激というものは、一般的なものよりも強く感じるものなのではないだろうか。
そういえば、妻の訴えに、喉の奥の痒みがあった。喉付近といえば甲状腺である。そして、喉の奥となれば、甲状腺の裏側、副甲状腺付近を指す。副甲状腺からは、パラトルモンという、血液中のカルシウム量を増加させるホルモンが分泌される。副甲状腺が機能を十分に発揮できていない場合、血中のカルシウム量が不足してもそれは増加されないということになるのではないか。
すなわちそれは最終的には骨密度に影響を及ぼし、関節付近の痛みに繋がるのではないだろうか。
ならば、副甲状腺機能低下症に効果があるらしいカルシウムやビタミンDを含んだ食品を奨めようではないか。
ここまでの私の考えを整理し、妻の病との闘いに貢献するには、タンパク質・糖分・カルシウム・ビタミンDを含んだ食材を用意することが大切なのかもしれない。
妻はきちんと自分のいまできることをしており、彼女なりに最善を尽くしている。思考力の低下など感じさせないほど、私を感動させる言葉を紡ぐことも多々あるほどだ。しかしそれは、ここに至るまでに数々の試練を乗り越えてきたからこそのものではないかと、私個人は考える。
妻は通院も行っているため、専門家の意見も聴いているだろう。だから私の推理の結論など、とうに認識しているか、あるいは外れているかもしれない。それでも、私は私なりに、妻を支えていきたいと考えている。
【推論】『線維筋痛症について』 千菅ちづる @Fhisca
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