3ページ目 11月17日

 引き続き、今分かっていることを書いていく。


<日付>

 日付は今いる部屋に置かれていた日めくりカレンダーの日付を参考にしている。


 このカレンダーを見付けた時は、閉じ込められてから既に数日が経過していた。

 他に人がいる気配もないので、カレンダーがこの日付のまま放っておかれてから、本当は何日経っているのかは分からない。恐らくは、正しい日付ではないのだろうと思う。


 だが、物事の起きた時間を整理するには正確さは必要なことではない。ようは私がここに来てから、大体何日が経過したか分かれば構わないのだ。

 だからこのカレンダーを見つけてからは、必ず毎日一枚ずつ、忘れずに剥がすように心掛けている。




<時間>

 幸いなことに、時間に関しては時計があちこちに置いてあるので分かる。


 一階の、吹き抜けの大階段を上った先の踊り場に振り子時計が一つ。

 二階の芸術の本が置かれている場所に、芸術とはかけ離れた凡庸な壁時計が一つ。

 三階でもどこかで時計を見かけた気がするが、どの部屋だったろうか。

 まだそれほど行っていない地下の階にも、恐らくあるのだろう。あそこは例のモーターの音が他の階よりも聞こえるので、あまり足を踏み入れていない。騒音というほどの大きさでもないのだが、どうにも気になってしまうのだ。


 そんなわけで、時間については気になればいつでも確認することができる。

 先程芸術の本コーナーを覗いたときは、十時より少し前を示していた。


 ただ、外から光が入り込んでこないせいだろうか。

 今が朝の十時なのか、夜の十時なのかが、少しだけあやふやになってきた気がする。

 どうにもおかしい。

 確かに転寝をした時には窓から光が差し込んできていたのだから、この図書館には窓があるはずなのだ。

 気になってきたので、一度窓の場所を確認しに行こうと思う。 




追記:

 確認をしてきた。窓がことごとく消え去っている。

 窓があっただろう場所には、色とりどりの暗い渦を巻いた絵が額縁に入れて飾られていた。

 日の光など入って来ない訳だ。


 この図書館は、やはり何かがおかしいのかもしれない。


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