邪悪な星座とおもちゃ箱

安良巻祐介

 

 匣人ハコビトが滅びたという話を聞いて、慌てて子供部屋へ向かって押入れを開けたら、廿楽つづら重ねにした匣は確かに色あせて枯れ草のような匂いをさせており、ひっくり返してみると虱に似た匣人の、真っ白く乾いた骸が大量にざらざらと零れてきた。

 押入れの裏で密かに栄華を誇り、さっぱり言葉の疎通はできないものの、襖に取り付けた覗き眼鏡から見るたび、頽廃的で祝祭的な箱庭を見せてくれた彼らの、永いようで短い歴史が今幕を閉じたのであった。

 原因は不明であった。

 ただ、滅びの数日前に、子ども部屋の模様替えがされて、大きい子どもの新しく買ってもらった、星明りを利用した投影器が、襖に幾つもの非実在星座を描いたりはしていたが、それがかの小国の滅亡に何かしらの関係があるのかどうかは、未だわからないままである。

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邪悪な星座とおもちゃ箱 安良巻祐介 @aramaki88

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