エピローグ
あなたの年を追い越し、今日で二十歳になった。
甦命美埜は、副長だった寒緋さんが総長として引き継ぎ、緩やかながらも元の勢いを取り戻していった。黄金梅では、初雁がトップを張るのは難しく、跡目争いが続いている。
あの後チームを抜けた私だけど、かつての仲間とは今でも交流があり、どんちゃん騒ぎにはよく呼ばれていた。あなたが守ってきたものは、今でも皆の心に強く根付いている。
「紅枝垂、そろそろこっちに来なよ。一緒に飲もう!」
紅華さんが宴からひとり離れて飲んでいた私に声をかけてくれる。
「うん、今行くよ」
数歩行ったところで、振り返る。廃屋を見守るソメイヨシノの木を見上げた。
「また、桜の季節に一緒に飲もう。そのときは黒千代香も持ってくるね」
ソメイヨシノは、答えるようにさわさわと枝葉を揺らした。
完
ソメイヨシノ 遠山李衣 @Toyamarii
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