図書館暮らし。

大福がちゃ丸。

本(叡智)を求める者よ

「ふぅ」

 と一息を付く。


 毎日、膨大な量の本の欠けがないかのチェック、傷み具合や、新書の入荷状況、その他もろもろの報告が上がってくる。

 資料に目を通し、まとめ上げるのが私たちの仕事なのだ。


「休憩時間に入る人は、一休みしてお茶にしましょう~」

「「「はぁ~い」」」

 大勢の声が重なる。

 私もその中の一人だ。

 テーブルを囲み、思い思いの時間を過ごす。

「あまり人が来ないから助かるわよね~、専門書が多いからかしら? くだらないのもあるけど」

 友人の作ってきた焼き菓子をほうばりながら、お茶を飲む。

「管理する側としては助かるけど、もっと利用してほしい気持ちもあるわね」

 本好きとしては、他の人たちにも読んでもらいたい気持ちはある。

「でも、乱暴に扱われると困るしね」

「まぁね、持ち出し禁止なのも助かるけどね」


 そんな戯言を言いながら時間が過ぎて行く。


 作業に戻りしばらくすると、この図書館に久々に来訪者が来た。

 入り口で、目を白黒させているその来訪者に、目的とこの巨大な図書館の案内をするために私は近づいていく。


「ようこそ、初めてご利用になる方ですか?」

 私の姿を見たとたん、その人は大きな叫び声を上げ、泡を吹いてその場に倒れこんだ。


「あらあら、また脆弱な未開種族が紛れ込んだみたいね」

 叫び声を聞きつけて同僚が集まってきた。

「私たちの姿を見て、気絶しちゃうなんて失礼よねぇ」

「おかしくなっちゃうのも居るし」

「でも、以前来た人は頑張ったわよぉ、確か誰かに脅されてここに来たって言ってたかしらぁ?」

「へー? その人どうしたの?」

「ここの資料を写して、国で出版するって言ってたわぁ」

「いいのそれ?」

「いいんじゃない?」


 私たちは、気絶した小さな体のその生物をソファーに寝かせ、起きるまで各自の作業に戻って行った。


 ここは、セラエノ図書館。

 この図書館のある第四惑星は、かつては豊かな密林が存在したが、今は砂漠化して金属性の霧に包まれた星になっている。

 普通に外に出たら、この脆弱な生物は即死であろう。


 ここは、セラエノ図書館。

 私たちは『管理するモノ』、黒く分厚いブロックで造られている図書館を管理している。

 皺の多い円錐形の巨大な体を揺らし、宇宙中から集まった本(叡智)を管理している。


 宇宙の深淵なる本(叡智)を求めて来るモノたちのために。

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図書館暮らし。 大福がちゃ丸。 @gatyamaru

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