パレット

作者 くろあり

59

20人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

青春群像劇をド直球で投げるのは難しい。
特に昨今は異世界(転生)ファンタジーがブームだから、現実世界が舞台の作品は傍流になるかもしれない。
また、群像劇だと必然的にキャラが増えて、読者にキャラ同士の関係で混乱を与えるかもしれない。
という具合に、小賢しい知恵モドキを働かせると、書き手側としては青春群像劇というテーマを敬遠せざるを得ません。
けれど、本作は軽やかに、清々しいまでストレートに見事に青春群像劇を描いています。

本作の主要キャラは男子三人、女子三人。計六人。
「六人もいるから読んでいて混乱するかも」と最初不安でしたが、そんなことはありませんでした。
それぞれキャラが立っていて、それぞれが魅力的です。
では、なぜキャラが立っているかというと、それぞれのキャラが別々の悩みを抱えているからだと思います。
恋や進路、他者と自分を比較しての劣等感。
青春時代を送った人間ならば、何かしらの共感を得ずにはいられない。

他者と友情を育んだり、恋慕する輝き。
進路への迷いや、劣等感から来る自己嫌悪といった曇り。
この作品には『青春』が、様々な絵の具が盛られたパレットのように描かれています。
だからこそ、立体的に物語を楽しめます。

青春時代が薔薇色だった人も、
灰色だった人も、
あるいは現在進行形で青春の真っ只中な人も、
胸に刺さる何かがある作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

多摩川にほど近い川原町団地は、幼稚園児からお年寄りまで住人みな顔見知りという昔ながらの人付き合いが残る集合住宅。
そんな団地で生まれ育ち兄弟姉妹のように仲の良い幼馴染の男女六人組を描いた青春群像劇。

モデルもびっくりな高身長だけど内気な夏菜。
ムードメーカーで周囲から愛されるアホ娘の千華。
口元のホクロがチャーミングなギャル系の美優。
サッカー部のキャプテンで爽やかなイケメンの修。
チビだけど誰よりも威勢がいい腕白小僧の元気。
そして自然と皆の先頭に立つリーダーの奏太。

放課後は誰かの家に集まって、ゲームをしたり、マンガを読んだり、そのまま寝落ちして男女交じって雑魚寝してしまう、そんな幼馴染たちの気のおけない関係が心なごむ。

しかし、六人も高校三年生に進学し、将来の進路を考え始める。
それは同時にモラトリアムの終わりを意味し、次第にそれぞれが秘めていた恋心があふれ出てきて、ただの幼馴染ではいられなくなる。

微妙な距離感と複雑な男女の恋愛模様が切なくも愛おしい気持ちで胸をいっぱいにさせてくれる。

男女六人それぞれの視点で語られていく、彼ら彼女らが見つめる先には誰がいるのか。

人生で最も美しい青春の真っ只中にいる若者たちの輝きが眩しい一作。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)