静かな世界の心地よい物語

ここに現実はなかった

この作品を読んだ第一印象はこれだ。物語は1人の詩人を中心に進んでいる。そう思って読み進めていくと、どこか不思議な感覚に陥る。
静かすぎる幻想に、まるで吸い込まれるような感覚に襲われ、時折読んでいることすら忘れてしまう。

また、至る所にちりばめられた言葉達が優しくストーリーを包み込んでいる

パッと見は硬い文章のように感じるが、実際読んで見るとそれはただの認識違いであったことを察するだろう。単語1つに留まらず、文字1つ1つに至るまで感情を孕んでおり、心に直接響いてくる。

この作品は、本当に素晴らしい作品だと思う。描かれている世界の静けさも、それを乗せている言葉も、その全てが心地よいものになっている。

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