閑話 二〇二号室へ、探偵からの着信
私が全ての文章を点検し終えたちょうどそのとき、まるで見計らったかのように室内に携帯のバイブ音が鳴り響いた。
慌てて自分のジーンズから携帯を取り出して、暗転している画面に目をしかめた。
私の携帯は鳴っていない。私の携帯ではない。
慥かに近くで鳴ったはずだと思い、周囲を見廻すとちょうど簡易ベットの下に隠れるようにスマートフォンが転がっていた。
手にとって画面を見れば、そこには非通知の番号が表示されていた。
騒音はマズい。一方的に通話を切っても良かったが、それもそれで不審がられる。
どうしたものかと逡巡していると、ふと立ち上げていたテキストファイルに目がいった。
もしやと思った。
そして私は恐る恐る画面の通話ボタンを押した。
「──全てだ。全て解明した。
首吊り雛の祭祀の夜、彌子村(みこむら)で起きた神隠しの正体。
五日間にわたる『アマゴサマの怪異』の全容が、だ。
今から怪異の正体を解き明かす上で、前提としてパソコンに残っているテキストファイルを読んでいることが必須条件となる。もしも読んでいないのなら、今すぐこの通話を終了し、読み終えたあとに折り返し電話を掛けてくれ。
・・・・・・・・・・・・通話を切らないな。
ならば前提条件を満たしたとする。
では、己(おれ)の推理を以て醜悪な怪異の正体を白日の下へ晒そうではないか。
準備はいいな?
覚悟はいいか?
よし。ならば慎んで傾聴してくれ給え。
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