恋愛
@daichi_gochan
第1話
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可愛い、好みだ、って、みんなに言ってるんでしょ?そうきかれ、私は焦った。その通り。皆に言うつもりだった。けれど。違いますよ。私はとっさに、そう答えた。一応嘘ではない。これまでのひとは皆、言い寄る前に逃げてしまったのである。要するに、私はモテないってことだ。塞翁が馬。神に感謝した。内心はともかく、これまで事実上、誰にも言い寄らなかったことを。
私は、悪い男であった。始終、嘘ばかり吐いていた。そんな事していないのに、植物の研究をしていると教えていた。留年しそうなのに、就活始めてると言っていた。嘘は、方便である。さほど、大きな事件にはならないと、考えていた。
私は文字通り、自分の首を絞めることとなった。私は相手を、食事に誘った。いっぱしの、ナンパ師のつもりでいたのである。調子に乗って口説いていた。賢い、まじめ大学生のふりをした。調子に乗って喋っていたら、是非行きましょう、ということになってしまった。相手は、本気で信じ込んだらしいのである。
「今度、食事中にごっちゃんの大学話、詳しく聞きたいわ。」
と言われてしまった。焦燥するばかりであった。全て、虚構なのである。純粋無垢なハートが、手の中をすり抜けてゆくかもしれない。できることはただ一つ。これからデートにいく前までに、我が陣形を整えることである。これまで以上に勉強しなくては。
小説も、これまで以上バリバリ書いて、安定 生産ラインを確保しなくては。作家を目指している、と教えてしまったのである。某小説投稿サイトに登録した。ここで有名になると、プロの道も開けるらしい。
今の私は、安定な執筆ができない。稀に、空からインスピレーションが降ってくる。それを捕まえて、固定するのが関の山である。これでは、作家として活動することなど、できようはずがない。一週間に一回は、必ず何か、執筆すること決めた。
私の作品はどれも、短すぎる。太宰や芥川先生の著作を探しても、自分のものと同じくらい短い作品は、無いようなのである。もしかすると、小説の最低長さは、ルールで決められているのかもしれない。急いでネット検索。
私は、ドタバタ走り始めた。変に、生活に活気がでる。これまで凝り固まっていたものが、その殻を破って動き始めた。冬の日の出。哀しいぐらいの快晴。冷たいんだけど、その冷たさには、希望がある。これこそ、恋愛のなせる技なのかもしれない。
恋愛 @daichi_gochan
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