第25話 マスコット的存在
「あのな......その姿を見られるわけにはいかないだろ」
「心配するな、我は姿を消せる、人間にばれることはまずない」
「ああそれなら安心、ってなるか! そもそもその体の大きさが問題なんだよ! 姿を消せても飛んだり歩いたりしたらさすがに音でばれるだろ」
「ふむ、言われてみればそれもそうか、分かった、ではこれならいいだろう」
「え......ファフどこに、――えぇ!! おまえなのか?」
さっきまでいた巨大な龍の面影はなく、目の前には限りなく小さくなったの黒龍がいた
しかもそのまま小さくなったわけではなく翼も爪も縮小と同時に鋭さがなくなっており危険性はなさそうに見える
これなら見た目だけ言えば黒龍とは思われないだろう
「体が大きいと問題があるといわれたのでな、ならば体を変えればいいだけの事」
簡単に言うが体を変えるって、もう訳が分からん......
まるでファンタジーだな
あっそっかここ異世界だったわ......
ファフニールは小さくなった翼で羽ばたき俺の目の前までやってくる
可愛い、どっかのマスコットにでもして売れば人気者になれそうだ
「とりあえず聞くけど、それって魔法だよな?」
「うむ、我の魔法、
ふーん、つまりあれか思いついたのがその小さな体ってわけか
ならちゃんとしたイメージを持っていたら他の生き物とかにも変身できるのだろうか
もしできたとしたらそれは革命的なことだ、考えても見てくれつまりイメージさえできれば誰にでも変身できるのだ、夢が広がるな!
魔法、侮っていたぜ......
「でもその体で戦えるのか? 小さすぎて逆に不安なんだが......」
「その時はその時だ、この体では肉弾戦では不利だが、魔法があるからな、いざとなったらもとに戻ればいいだけのことだ」
「それもそうか、そういえばファフニールって無詠唱で魔法が使えるんだな、流石というべきか驚きの連続だ」
「無詠唱、もともと魔法に詠唱は必要がない、人間が理解、扱いやすくするために補助的な意味合いで付けたのが詠唱だ。人的魔法というべきか、あれは我々龍族の魔法をまねて作られたものだ」
あはは、さっきからなんでこう初耳な単語が多いのだろう
簡単に整理すると、もともと魔法は龍族が使っていたものでそれを人族が使えるようにするために詠唱という概念を付け足したということか
龍族、簡単に言えば最強の種族、誰も語がその存在に恐怖し、近づくことすら恐れる、こんなの見たらだれだって逃げたくなるもんな
この世界に確認されているだけでも数十体の個体がいるらしい
ファフニール以外見たことがないが皆変人だと言っていたな
会いたいかといえば会いたくはない
ファフニールみたいに友好的ではない可能性のほうが高いからな
「で、ついて来ようとするのは分かったけど、どこにいるつもりなんだ?」
「そのフードの下に隠れれば気づかれることはまずないだろう」
ばれることはないだろうが......心配事が一つ
「分かった、でも絶対これだけは守ってくれ、むやみに人を殺すなよ?」
「なぜだ? 殺してもたくさんいるのだ。別にいいだろう」
よくないんだよ......放置してたら多分多くの人が犠牲になる
こいつの胃袋は化け物だ、人間の国に行けば必ず食料が必要になる、考えておかないと勝手にその辺の住人食べるに決まっている
人間=食料だからな
「食料は何とかする、俺が許可した人間だけにしてくれ、頼む」
「――まあよかろう」
心配だ......
ただそれだけが俺の頭の中に残る、ただ信じることしかできないっていうのは酷なことだ
「では第十回族長会議を始める、今回の議題は前回に引き続き行方不明者たちについて。先日ブレイブ王国に行方不明者がいると憶測を建てましたが確実になった。一人死亡が確認された。」
「ああ、そのようだな、人間族の考えそうなことだ」
ワンダフルは頷き、シアンは苦そうな顔をする
皆分かっていた、このまま話し合いが続けば必ず取り返しにつかないことになる
だからこれは無意味な話し合いであることも分かる
一人悩み続けたであろう男の目の下にはクマができていた
もうちょっと相談に乗るべきだったかとは思ったがその顔は依然と比べ少しだけすっきりしたように見えた
一人で解決したのかもな、案外心は強かったようだ
「俺はブレイブ王国に行く、考えは変えるつもりはない、カインお前はどうなんだ」
「......聞いていいか? もしも仲間の一人が危険に陥っていて助けようとする、だがその間にはもう一人仲間の危機が迫っていた場合、連、お前はどうする」
カインは真剣な顔で俺を見る
「そうだな......どっちも助ける、と言いたいところだがそれはさすがに傲慢すぎる、俺なら助けたいと思った方を助ける、それが同価値であったなら俺は近い方を助ける、より確率が高く助けれる見込みがある方を優先する、それが俺の考えだ」
正直、非道だと思われたとしてもいい、少しでも助けられる確率があるのなら俺は助けようと思うし無理だとと思ったなら絶対に助けない
これだけは譲れない、絶対にだ
「......わかった、俺はお前に全部任せる。仲間を家族を助けてくれ、こっちは俺が何としてでも守り抜く」
その目には覚悟というよりも自信とやる気で満ち溢れていた
「任せろ、必ず助け出す」
こうしてようやく長かった話が終わり、俺はブレイブ王国に行く準備を始める
今回はファフニールがついてくるということなので安全面は保証された
しかし逆にここは危険になるということだ、いつ人間族が来るかわからない
どちらにしたって早く終わらせればいいだけの話だが俺はまだブレイブ王国に行ったことがないしそもそもこの森の外に出たことがない
まずは周囲の村で聞き込みをする
亜人の事や勇者について、なるべき多くの事だ、そして同時に食料品の購入
人間の国にはやはりお金というものがあり今の俺にはエルフ族が人間族から奪い取った結構なお金がある、だがこれを全部使ってしまっては意味がない
お金を稼ぎつつ情報収集をした方が賢いか
いろいろ考えてはいるが結局は国に入ってみないとわからないこと
「人間の国か......」
ふと思う、あの時俺がアルネシアの言葉を無視して人間の国に言っていたらどうなっていたのだろう
なぜ俺はあそこで首を縦に振り、亜人たちに協力しようと思ったのだろう
もしかしたら俺は――
「アルネシア......どこに行ったんだろうな」
あいつが消えた原因なんて一つしかない、父を探しに行ったそれしかないだろう自分の中に言い訳をして考えないようにしていたが今思えばそれしか考えられない、俺の中に残るこのもやもや感はきっと何も相談せず勝手に出て行った彼女に不満があるからだ
勝手にいなくなった彼女に裏切られたと感じてしまった時点でもう俺の中にあった安心感は消えてしまった
やはり俺は寂しいのだろう
正直先日死体で発見されたエルフがアルネシアじゃなくてほっとしていた
もし彼女が死んでいたらと思うとそれだけでぞっとしてしまう
それだけ彼女の存在は俺の中で大きくなっていた
「絶対に見つけてやる、お前には言いたいことがたくさんあるからな」
空を見あげると星たちがキラキラと輝いて見えた
「ちょっといいか?」
「カインか? いいぞ何の用だ?」
「俺たちを襲ったやつについてだ。あいつは――」
もしかしたらもしかするかもしれない @tubuanv
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