第05話「紡グ対価」
SCENE5-1≪反転≫
(さて、ここは一気に攻める場面。下手に時間をかけては奇襲した意味が無くなる)
仮に10秒放置すれば5%、1分放置で30%までリチャージが完了してしまう。継王機という存在はただそこに存在するだけでそれだけの可能性を生み出す怪物。相手が何かをする前に、撃破してしまうに限る。
「三佐、タイミングをこちらと合わせろ。集中砲火だ」
『了解』
11機の量産型は一糸乱れぬリズムでレーザーライフルを構えて、その
地を這う
見たところ、加藤の試作機から奪ったブレードを装備しているが。だとしても逆転の目はない。もうこの時点で勝敗は決しているのだ。後はどれだけ被害を少なく勝利するのかの一点。
空に浮かぶ
◇
ならば、この場に使えるリソースはあるのか? 60発のマイクロミサイル、右手に握った中型ブレード、残された十数%のエネルギーゲイン。回復速度を考えればギリギリ1発バーストインパクトを放てるかもしれないが、間合いを詰めるエネルギーが足りない。
向けられた11つの
ならば、削れる部分はどこだ?
体はまだ動く。記憶はもうない。魂はようやく蘇った。
カチャリ、とポケットの中でスイッチが音を立てる。
そこでふと気が付いた。R粒子炉が可能性を燃やすという言葉の意味を。
「そ■君、■ー■?」
ユイが宗次郎の名を呼んでいる。ああ分かっている。けれど方法はそれしかない。灰色に切り替わった世界で、彼は操縦桿から離した右手をポケットの中に突っ込み、スイッチを押し込んでONにする。
その行為に意味は無い。ただの確認。
広兼教授の言っていた可能性とは、あの装置における電球の光ではない。あれは存在の有無を模式的に表しているだけである。つまりR粒子炉が、
「そー君、だめぇぇぇぇっ!」
初めて聞いたユイの叫び、けれど止まれない。
世界が赤く染まり、宗次郎の意志に応えた
【R粒子炉反転稼働承認しますか? Y/N】
どこまでもシンプルで、致命的な文言。ユイのような祈りは必要ない。宗次郎に必要なのはどこまでもシンプルな覚悟ただそれだけ。後ろから伸びる手がその背に届く前に彼の指がウィンドウに展開するYの字に触れて
◇
オフィス街を核爆弾の爆発を凌駕する熱エネルギーと、それによって生み出された衝撃波が蹂躙する。どのような手段を取ったとしても、あの蒼い機体がこちらと同じ
収束する爆炎と共に、地上に穿たれた惨状が視界に飛び込んでくる。赤熱した空気がアスファルトを液状化させ、融点を超えた金属が水飴の如く蕩けて折れ曲がる。ガラスは砕ける前に蒸発し、あるいは灼熱地獄が存在するのなら眼前の光景になるのだろうか?
戦いとすら呼べない一方的な蹂躙。相応のリソースを使ったが、加藤を殺した相手を無為無策に放置していれば今後どうなるかは分からない。不確定要素は可能な限り取り除くべきだ。
「三佐、
『いえ、まだです』
プラズマ化した大気に巻き込まれ、一番至近距離位置していた
「ちぃ! 何が!?」
爆心地から何かが立ち上がる。それは世界を塗りつぶす怪物。歪んだ蒼が見える。溶けたアスファルトの海、その中心で今しがたレーザーを放った灰色の右腕をこちらに向ける影が一つ。
鋭く赤い爪、羽の如く背中から突き出した
左から右に移ったアイセンサーの光から禍々しい赤色が漏れ出している。
――【リバース】――
ポケットの中に入れられた
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