異郷の隣人

 あなたの名前を知らない。兄さんはずっと兄さんで、私たちはこの家に二人きり。


 はじめましてのその時に、あなたが口にした言葉は知らない響きで、それって初めましてということなのか、名前だったのか、分からないけれど今も愛しい。あの時何と言ったの、と一度聞いてみたことがあったけれど、兄さんは笑っただけだった。私の言葉では真似できない兄さんの言葉の中に、きっと名前も埋まっているのね。

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しあわせのみつば /掌編集 ほがり 仰夜 @torinomeBinzume

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