第4話 サヨナラは言わないよ
ゴーン、ゴーン、低い音が街の中に響き渡る。
これはハロウィンの終の合図。鐘が鳴ると街の子供たちは家に帰らなかければいけない。もうそんな時間か。
いつもは鐘がなる前に目星の付いた家に回り終え、家に着いているのに。今日は1人じゃなかったから、時間があっという間に過ぎてしまった。
「ジャック、お家はどこ?今日のお礼じゃないけど良かったら一緒に近くまで帰らないか。」
思ってた以上にジャックとの時間が楽しかった僕は精一杯のお誘いをした。
するとジャックは重たそうなかぼちゃ頭をブンブンと振り回し
「お家トオイのいいよ、」
と小さくポツリ
「じゃあ、明日!学校でも遊ぼうよ、僕ジャックと一緒で楽しかったんだ。(初めはちょっと変とか思っちゃったけど...)」
するとジャックは両手いっぱいギューっと握りしめ
「ジャック、トムのお友達?」
そうポツリと呟いた。
そしてポケットの中にあった何かを僕の手に乗せ
「ずっと一緒でアリガト
ずっと握ってたのトム初めて」
そう言ってずっと握っていた右手をパッと離す。
「1人で帰るの?」
僕の問いかけうんとも答えもせず、ただぴょんぴょんとスキップのようなダンスのような、ちょっと変な足取りでジャックは闇の中に消えていった。
手の中にはちょっとだけ溶けた飴玉が4つ
かぼちゃのパッケージ、街でよく配ってるやつだ。
あれ、僕ジャックに名前教えたっけ
不意に今思い出したんだ。
ジャックの名前は聞いたから知ってるけど、
ジャックに教えたかな思い出せない。
いつもと違うことが起きたから、知らない間に言ってたのかも。
そうだ、明日学校でジャックを探そう。
背格好は僕と殆ど同じで少し細め
声はちょっと可愛い感じで、話し方が独特だから誰かに聞けば見つかるだろう。
いつもペアじゃなくて1人で行動する子どももきっと少ないはず。
明日ジャックに会ったら僕も美味しいお菓子をプレゼントするんだ。ままにスコーンの焼き方でも教わろうかな。
今までこんなこと思ってもなかったのに、なんだか僕じゃないみたい。
1人になった途端こんなにも通りががらんと大きくなると感じて少し寂しくなる。
帰ろうか、いつもより帰りが遅いから、ママ達心配していなきゃいいけど。
バサッとマントをなびかせてそうだ僕は吸血鬼だったと、月夜の中を悠々と飛び回りカバンいっぱいのお菓子を落ちないよう何度も確認しながら家に向かう。
なんだか夢見たい。今でもジャックという人物が誰なのか、なんとも言えない特別な気分にさせてしまう。
「ニアの誘い断って良かったな」
フフッと少しにやけた顔を冷たい風で覚ましながら僕は夜を歩く。
それはとてもいい気分だった。
ハロウィーンの夜で会おうね。 @mizuhao
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