三国時代の蜀漢に、ひとりの猛将がいた。
儒教的価値観と末路から裏切者として冷視され、それを受けて演義においては叛骨の相などと誇張され、その画は傲岸な凶相として描かれ、挙句の果てにはゲームでは人語を解するかさえ定かではない蛮人として造形される。
だがその男、魏文長は実際のところただの一度も裏切ってはいない。
彼は栄達を求め野心に狂った裏切者ではない。
では彼は、臥竜去りし後、何のために蜀へと駈け、同胞たちと争ったのか。
これはその烈しさゆえに孤高となり、その夢の純なるがゆえに散った悲劇の名将のエピローグである。