第2話標的

 学校、とくに女子高にはスクールカーストと言うのが必ずと言っていいほど存在する。

 1週間程様子を見たが、やはり1軍は沙月達、派手系と琉依達、ヤンキー系だった。

 そして、琉依よりも沙月の方が威圧が凄いため沙月がトップ。

 決して、逆らってはいけない存在。

 私と紅音はおそらく3軍、普通だ。

 取り敢えずは3軍でいいや。と私は思うが、クラスの一部の女子は1軍に入りたいのか必死に手足となって沙月達のために動いていた。



 数ヶ月経ったある日、夏休み前にある文化祭の出し物についての話し合いがあった。

 学級委員になった紅音が話を上手くまとめようと頑張っている。

「4組で何か出したいものがある人はいますか?」

「はいはーい!!」

 紅音の問いかけに真っ先に手を挙げたのは雪奈だった。

「メイドカフェがいいでーす!」

「メイドカフェ?私、メイド服なんて着たくないんだけど。」

 即否定する沙月。

「と、取り敢えず、意見として黒板に書いとくね。」

 紅音が沙月に少し怯えながら黒板に書こうとする。すると…

「ちょっと待ってよ。私は反対って言ってるでしょ。それなら、無しに決まってるじゃん。」

 沙月の自己中心な発言に紅音が困惑の表情を浮かべた。

「…あくまで意見だから、ね?」

「ふ〜ん…」

 凄い不満そうな沙月から目を逸らし、紅音は話を進めていく。

 結果、私達のクラスでは普通のカフェをすることになった。

 話し合いが進む間、沙月はただただ無言で紅音のことを鋭い目付きで睨み続けていた…。



 昼休み、私が紅音のところに行こうとしたとき、沙月のグループが紅音を囲んだ。

「八神。」

「…ど、どうしたの?」

「さっきはよく私に意見したね。どういうつもり?何様なの?」

「そ、れは…。」

 いきなり詰め寄られ、困る紅音。

「えー、あれじゃない?もしかして、八神ちゃんは沙月のことが嫌いだから沙月の言うことは聞きたくなかったとかー?」

 雪奈がクスクスと笑いながら煽る。雪奈の発言に明らかに沙月の眉間にしわがよった。

「はぁ!?」

「ち、違うよ!!!」

「じゃあ、何だよ!」

「てか、そう思っている人程、違うとか何とか言ってるよね〜。」

「そんなこと思ってない!!」

 すると、沙月は紅音の胸倉を掴んで脅すような声を出した。

「え、何?雪奈が嘘をついているとでも言いたいわけ?」

「…そう、です。」

 怖さからか紅音は敬語で話し出す。

「うわ〜!ひっど〜い!」

「えー、雪奈、可哀想でしょー。」

「酷いねぇ〜」

 どんどん煽る3人に紅音の顔は青ざめていった。

「ほら、私に雪奈に謝りなよ。「そんなこと思って本当にすいませんでした。雪奈を嘘吐きと言ってすいませんでした。」ってさ。」

 胸倉を掴む手を離すと、沙月は1歩下がる。

 紅音は唇をかみしめて、頭を下げた。

「沙月ちゃん…あんなことを言って、ごめんなさい…。雪奈ちゃんも…嘘吐きって言ってごめんなさい……。」

 声が掠れながらも紅音は謝る。

 しかし、沙月は…

「は?ちゃんと謝れよ。」

「え?」

「土下座だよ、土下座。そんなことも八神の頭じゃ分からないわけ?」

「土、下座…。」

「そういうのいいから。ほら、さっさとしろよ!!!」

「……。」

 紅音は黙ってその場に正座すると、まだ他の人が沢山いる中で、教室の床に頭をついた。

「本当にすいませんでした……。」

「最初からそうしろよ。ほんっと手間かけさせやがって!」

 謝る紅音の頭に沙月は上履きをぐりぐりと押し付けた。

「あー!もう、いや!!明日から八神と喋ったやつは罰だから。絶対に喋るんじゃねーぞ。」

「まぁ、八神ちゃんが悪いからしょうがないよね〜」

 沙月が紅音をいじめの対象にしたことを強調させる雪奈。

 でも、そのもとを作ったのは雪奈。

 上手く逃げるよね…。

 そんな沙月の宣言に紅音は静かに泣いていた……。



 その日の夜、紅音からきた1文。

【桃香、しばらくは離れててね。】

「え…」

 私は慌てて、返信した。

【ちょっ、どういうこと?】

【聞いてたでしょ?沙月ちゃんの言ってたこと。なら、桃香も私から離れないと一緒になっちゃう。】

【私は紅音と仲良くしたい!】

【うん。休日とは遊んでね。じゃ、おやすみ。また明日】

 強制的に終わらせられた会話。

 私はそのやり取りを見て、不安の気持ちしかなかった…。

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下剋上教室 織結 @oyu_370

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