5:俺だって転生したい
受け取った情報を整理するのに、少し時間が必要だった。
「つまり、さっき俺が突き飛ばしたギャルは」
「アンドウ・カレンちゃん? そう、あの子はダンプカーに轢かれて死んだ後、どこかの異世界に転生する予定だったのよ」
それを俺が阻止した、と。
「まあ、ああいう子はチート能力があっても、なかなか要領がつかめなくて、最初は苦労するのよー。そのまま心折れちゃったりね。いくら素質があるって言っても、環境次第じゃ芽が出なかったりするのよね」
訳知り顔で、ブリュンヒルデ。
「そこを君が救った。すごい! よ! 流石! オットコマエ!」
「ヨイショすんのヘタクソかよ」
なんだか妙な疲労感を憶えて、俺はその場に座り込んだ。
「転生する人が増えすぎたから、減らしたい。うん。なるほど、あんた達ヴァルハラの事情は分かった。で、俺にとってのメリットは?」
異世界での呑気な田舎暮らしとハーレムはどこに行った?
「え。だって、人助けだよ。可愛いギャル助けたじゃん。君、ヒーローじゃん」
「うん、ありがとう。それで?」
名誉はいい。褒められるのは嬉しい。
でも金も欲しい。
あとハーレム……分かった。わがままは言わない。
この際、可愛い彼女だけでもいい。
もう俺のことを受け止めて、あれやこれやと付き合ってくれる、かわいくておっぱいの大きい女の子がいればそれでいい。
「清実ちゃん、アレだね。すっごい俗物だね」
その台詞を聞くのは死んでから二度目だ。
「むしろ俺以外の死人が清廉潔白過ぎるだろ」
「いやいや。あたし結構な数見てきたけど、ここまでゲスい……失礼、図々しい人はいなかったね」
「なんで言い直した」
ブリュンヒルデはやれやれと肩をすくめて――なんかムカつくな――手のひらを差し出してきた。
「自分で気付くまで内緒にしようと思ってたんだけどな―」
またしても浮かび上がる、光。
今度は珠というほど密集していない。
ぷかりと浮かぶ光の文字。
「ヒントはこれ。さっきあたしが回収しておいたの」
ということは、この光の文字は、何か役に立つ……
「あ。これ。フレイアがくれたチート能力の素?」
「そう。君が運命を変えたことで排出された『変革力』。これを集めれば、君もやがて異世界に転生できるってわけ!」
なるほど。
それなら、ちょっとはやる気が出てくるような……
「いや待て。結局、順番待ちさせられてるだけじゃね?」
「い、いいから! 大事に貯めときなさい! ホラ!」
相変わらず釈然としないまま、俺はとりあえず『変革力』とやらを受け取った。
出てきた時と同じく、光は音もなく手のひらに吸い込まれていく。
ピロリン、と気の抜けた効果音。
誰だこの音決めたヤツ! やる気削がれるわ!
……さて、と。
とりあえず、俺は立ち上がった。
とにかく生き返ってしまった以上はどうにか生きていかなきゃいけないんだろう。
というか、俺死んだんだよな? 死体とか、葬式とか、そういうのどうなったんだろ……
「――あ! いた、アンタ!」
呼ぶ声に、俺は思わずぎくりとなった。
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