第1章 転生を阻止するだけの簡単なお仕事
1:チート能力は条件付きで
気付けば俺は、見たこともない場所に立っていた。
見渡す限り真っ白で、自分以外には誰もいない。
まるで神様が手抜きをしたみたいな空白だけが広がっている。
いわゆる死後の世界というやつか。
「聞こえますか?」
女の声が、だだっ広い空間に響く。
(来た)
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
知ってるぞ。見たことある。
不慮の事故で死んでしまった哀れな魂に、第二の生を与えてくれるやつだ。
「聞こえてる。あんたは誰?」
「概ね、あなたが考えている通りですよ」
話が早いのは向こうも同じだった。
一瞬の光が走り、女が姿を現す。
「初めまして。私はフレイア。あなた方が言うところの神です」
言われなくても神としか思えない。
とんでもない美女。
星を散りばめたような長い金髪に、透き通りそうなほど白い肌。
そしてメリハリが効きまくったプロポーション。
しかも身につけてるのは、柔らかそうな薄布だけ。
「
このファッションは殺傷力が高すぎる。童貞でなくても死ぬ。
ていうか、これもう裸じゃないか。
薄布、透けてるし。微妙に見えそうで見えない――と見せかけて実は見えてるような――むしろ全裸よりすごいんじゃないコレ。
「……ちょっと」
ヤバい。すごい。おっぱいすごい。
女神じゃなければ、他の何か危険な存在じゃないか。
悪魔とか。
「ちょっと! どこ見てるんですか、もう! 私、神ですからね。降しますよ天罰。ていうか、もう少し畏れ敬ってください」
「すいません、なんか……いや、神なのは分かるんですけど」
あまりにも全てが整いすぎていて現実感がないというか。
もしかするとこれ夢なんじゃないの、って気がしていて。
エッチな方の夢。
「残念ながら現実です。本当はあなた、助かる予定だったんですけどね。ちょっと手違いがありまして」
「……え、じゃあ、謝罪と賠償を要求してもいいの?」
やったぜ! エッチなやつだ! と俺は心の中でガッツポーズを取るが。
フレイアはニッコリと笑った。
「清実くん。あなた、アレでしょう? チート能力とか欲しいんでしょう?」
あ、そっち。
うん、そっちの方でもいいです。
ていうか人の命は地球よりも重いんだぞ。チートだけじゃ足りないんだからな!
ついでに異世界での穏やかな暮らしとハーレムもください。
口には出さなかったけれど、多分フレイアにはバレているのだろう。
さっきから、俺の言葉よりも思考に反応しているように見える。
「清実くんはアレですね。だいぶ俗物ですね」
案の定、憐れむような目。
自分で聞いたくせに。
「うるさいな。女神に比べれば、みんな俗物だよ」
大体、お前が生み出したんだろう、地上の生き物は。
「まあ良いわ。あげますあげます、チート能力。条件付きですけど」
思った以上にぞんざいな感じで、フレイアが手を差し出す。
手のひらから湧き上がったのは、白い光の球。
目を凝らすと、何か輝く文字のようなものが凝縮されているのが分かる。
「それに触れば、俺もチート獲得ですか?」
「話が早くて助かります」
ところで、条件付きってなんですか。
ていうか、どんなチートがいいとか、選べないの?
「いいから早くしてください。どうせもらうんでしょ? 大丈夫ですよ、今流行ってるやつですし。というか後がつかえてるんで。私忙しいんですよ、神なので」
心底面倒くさそうに、というか、若干疲れすらにじませながら、フレイア。
神も疲れるのか……
「まあそんなヒドい条件じゃないんで。デスゲームとかしないんで。ね」
「え。ちょっと、え、なんか押し切ろうとしてません?」
「いいえ。というかもう次、待ってるんで。はい。ほら!」
ずいっと突き出された光の球。
ついでにぶるんと揺れるフレイアの乳。
でかい。柔らかそう。薄布からちょっとピンク色はみ出てる。
「詳しい説明は後で担当の者に聞いてください。ね。どうぞ!」
俺はものすごい紳士なので、とても大変極めて紳士的な手つきで左のおっぱいに――あ、めっちゃ睨まれた――光の球に手を触れた。
「はい頑張って! じゃ、次の方どうぞー」
衝撃。しかる後に落下。
――どれぐらいの時間が経っただろう。
ふと目を覚ますと。
そこは、どう見ても異世界ではなかった。
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