第8話 そんな選択肢はない!
認知症の90歳のおばあちゃんの話。このおばあちゃんは常に車いすに乗っていても、いすに座っていても、横になっていても、歯磨きやお食事のお手伝いをしても口だけ動き、常に目をつむって開けようとしない方である。
前日休みで月の日が日勤だった私は病棟に着くなり、
「キエエエエエエエエエェェェェェーーーーーーー」
との声を耳にした
何だここは・・・病棟だよね?・・・
動物園?
何と昨日から転入してきたおばあちゃんの雄たけびだった。
個室であることが裏目にでて寂しさからの発言だったようだ。
「キエエエエエエエエエェェェェェーーーーーーー」
一日中悲鳴を雄たけびが病棟中に響いているため、できるだけナースステーションで看護師と過ごすことが多くなった。
しかし、仕事をしながらおばあちゃんとお話をして過ごすことに限界がきて、
「新聞を読みませんか?」
と尋ねると
「読む!!!!!」
ととても良い返事が返ってきたため、
「読売新聞ですか?スポーツ新聞?それとも・・・」
と続けようとしたら
「イタリア!!!!イタリアの新聞はないの?」と叫び出す。
イ、イ、イタリアだと!?!?
もちろん、私の病院にはイタリアの新聞なんてものはない。
そもそもグラーバルな選択肢などない!
「イタリア、イタリア、イタリア」と叫び始めている。毎日雄たけびを上げているせいもあり、
「イタリヴァ・・ゲホ、イダリヴ・・ごほごほ・・・く・る・しい・・・」
という始末。そりゃあ苦しいでしょ、そんだけ叫べば・・・
現に今も目をつむっているし、分からないだろうと、
「どうぞ、新聞ですよ。」と渡すと
目を開けることなく投げ落とした
「これはイタリアの新聞違う」
目も明けていないのになぜわかる!?!?
何度か同じやり取りをして
「寝る」といい寝てしまう患者様でした。
看護師の日常 @riritoisao
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