第9話 星空
黄昏時になり、私たちは庭から一旦引き上げた。
アーベルは昨日、固いパンとほうれん草しか与えなかったが、今日は私と同じ食事を与えた。
「私はあなたと言う人が、本当に分からない」
「そいつは褒め言葉としてとっておこう」
アーベルは匙でスープをすくった。
「……その、すまない。昨日まで、ぞんざいな扱いをして」
「君が人を思いやる気持ちを持ってくれてうれしいよ」
ああもう……うるさいな……。
「今夜、星空を観に行かないかい?」
「……構わぬが」
私の食べるスピードが速くなる。
一体どうしてだろう。
約束の時間まで、チェスをしていた。
私は一勝もできず、夜を迎えた。
曇ればいいのだ。
アーベルの残念がる顔が見たい。
私はにやりとそう思いながら、外に出たが。
外は満点の星空が広がっていた。
「どれか落っこちてきそうだね」
「私は詩人は嫌いだ」
アーベルは前に出て、なにやら両手を上げ、力んだ。
「……何をしているのだ?」
「僕も魔法が使えたらなって。あの星、蒼い星だよ。もっと輝けたらなって」
「あほくさい」
「ねぇ、ララ」
「なんだ」
「好きだよ」
「僕、ララのことが好きだよ」
…………。
「……星空を味方につければうまくいくとでも思ったのか?」
「辛らつだね」
だが。
アーベルは私に近づき。
「こうして暗闇じゃ、君の顔はわからないけど」
……よせ。
「近づいて、頬にふれると、ほら」
「……やめろ!!」
アーベルは私を強く抱きしめた。
「この頬を伝っている、濡れた水は、なんだろうね」
私は、泣いていた。
ただ理由も分からず、泣いていた。
七つの星が消えるまで 神羅神楽 @shinra_kagura
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